L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開
第4話 見えないアンドロイド
「マダム・スー。我々が外の農場で実験している間、しばらくホロチャンバーで待機願います」
ケイがホログラムチャンバー内にのみ存在できる彼女に話しかけた。
「私が同行し、サポートした方がよろしいのではないですか?」
マダム・スーは、実態を持たず、通信によって移動可能な、高度な知性を備えたSU3800型フォトロイドである。ホログラムチャンバー内では、光子(フォトン)でできた体を再現できるが、それ以外の場所では、他のアンドロイドに乗り移って活動する。
「いいえ、マダム・スー。ここのメカロイド達には、個性を尊重しています。乗り移るようなことはご遠慮ください」
ケイは、マダム・スーの提案をやんわりと退けた。
そもそもマダム・スーは、感情を持つアンドロイドの抹殺任務のために、太陽系司令部から送り込まれた刺客である。エルやケイはそのことに気付いているが、彼女を排除することは、自分たちへの疑惑を深めることになるため、敢えて感情を押し隠し、マダム・スーに接していた。マダム・スーも表面上、アップルの開拓の後押しをするようなアドバイスをしているが、この星で稼働するアンドロイドたちへの疑念は抱いたまま、彼らと行動を共にしていた。
「ブルーノ。DNAナノロボットを、ストレージケースに移し終えたら報告を」
「はい。分かりました。あと4分20秒ほどかかります」
ケイが指示を出したのは、80(ハチマル)EXメカロイドのブルーノである。このアンドロイドはケイに忠実で、彼の研究を手伝うために存在している。
ホログラムチャンバーの中で、大地に根付く微生物の代わりになるDNAナノロボットの研究を終え、ようやく外の環境に、そのDNAナノロボットを放つ実験がスタートする。その概念をケイにアドバイスしたのがマダム・スーである。
「今日の気温は28度Cでございますから、理論上少し多めに・・・」
「解かっていますよ。マダム・スー。熱による質量変換も視野に入れますので、心配はご無用です」
ブルーノがマダム・スーの説明に割って入った。
「何を愚かな。心配などする機能は、持ち合わせておりません! あなたの計算が信用できないから、申し上げているのでございます」
マダム・スーは首を傾げ、ブルーノを観察するように見た。
「本当に心配はいりませんよ。ハチマル(メカロイド80シリーズ)も、演算能力では我々に引けを取りません」
ケイが言うと、
作品名:L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開 作家名:亨利(ヘンリー)