L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開
「本当にそうでございましょうか。100年以上前のテクノロジーを搭載したアンドロイドでは、機能に限りがございますわ」
「私のプログラムは最新バージョンでインストールしてもらえていますし、拡張機能も搭載済みです」
ブルーノが切り返すと、
「それでも、私が乗り移った場合など、あなたの動作には制限が多過ぎて、使えない機種ですわ」
「解析能力には問題ありません。もしお疑いなら、私の試算を検算されてはいかがですか?」
ブルーノがマダム・スーにそう言うと。
「・・・そうですわね。本当に信用できる能力をお持ちか、確認させていただきたいですわ」
感情を持たない者同士とはいえ、ズバズバとものを言うのをケイは冷静に見ていた。
ケイは、この二人の関係があまりうまくいっていないと感じていた。マダム・スーのような最新式の人工知能は、ブルーノのような下位機種を軽く見る傾向にある。
「ブルーノのCPUをスキャンさせていただきます」
マダム・スーはそう言うと、また首を傾げ、しばらく小さく痙攣を繰り返しながら、目をつむった瞬間、その場から消えた。ブルーノの中に入ったのだろう。ブルーノはじっとして動かなくなった。
「マダム・スー。あと数分でDNAナノロボットの移し替えが完了します。そうしたらすぐに農場に行きたいのですが・・・」
ケイが声をかけると、
「解っております。ハチマルは容量が小さいので、スキャンは1分で終わります。終われば、私自身はシャットダウンさせていただきます」
このように、ブルーノの体を借りて話した。
やがて、ブルーノは再び動き出した。スキャンが終了したようだ。
「問題は見つかりませんでしたわ。外での実験をお任せしても、大丈夫そうでございます」
マダム・スーは姿を見せず、ホログラムチャンバー内に彼女の声だけが聞こえた。
「では、ケイ様。参りましょう」
ブルーノはそう言うと、DNAナノロボットを入れたストレージケースを手に持った。
作品名:L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開 作家名:亨利(ヘンリー)