L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開
ジェイは急いで、エルの体と飛び散った肉体の一部を集めた。その骨格は頑丈で、破損個所は修理できそうだ。しかし、肉体部分を修復することは、この探査船では不可能だろう。生体機能が回復しなければ、エルの復旧は絶望的だ。
「エルを修理するのは不可能だ。諦めるしかない」
「そんなこと言わないで、タックも助けてあげて」
タックはエルの飼い猫だが、やはり爆発の衝撃で、ケガをしていた。それをキュウは、コクピットの座席に、ベルトで固定して保護していた。子守唄はそこで流れている。
「俺は衛生兵じゃねえんだぞ」
「お願いだから・・・」
キュウは泣いて頼んだ。セカンドロイドは、涙を流せるのだ。
「じゃ、猫を抱いて付いて来な」
ジェイは、エルを抱えて、コクピットを出た。キュウも慌ててタックを抱き上げて、子守唄を再生している端末機器を掴んで、その後を追いかけた。
ジェイが向かったのは居住モジュールだった。エルの部屋に入るとすぐに、窓の外を確認したが、アッシュの姿はなかった。
「このシールドを開けるんだ」
ジェイはキュウに、人工睡眠キャスケットを開けるように言った。キュウはタックを片手に抱きなおして、慣れた手付きで、そのシールドを開けた。
「これしか方法はねえ」
ジェイはエルの体をキャスケットに横たわらせると、キュウからタックを受け取り、エルのお腹に乗せて、再びシールドを閉めた。そしてプログラムを無期限にセットして、エンターキーを押すと、わずかに震えていたタックも、すぐに目を閉じて動かなくなった。
「キュウ。泣いてる場合じゃない。よく聞くんだ。エルは、設備の整った施設でないと直せねえ。こうやって連れて行くしかない」
「うん。分かった」
「でも、問題はどうやって、そこまで連れて行くかってことだ」
「この船はもう動かないの?」
作品名:L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開 作家名:亨利(ヘンリー)