L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開
第2話解説
ケイはエルと出会ったことで、感情というものに興味を持った。人間がプログラムする人工知能に、感情を持たせたいと思うのは自然なことだろう。しかし、機械が感情を持ちたいなどと望むはずはない。
あたかも感情を持っているように行動させたり、感情を表現する動作を繰り返し、より自然に見えるようにしたり。・・・いやいや、すべて作り物だ。機械はやはり感情など持ちえない。現実の世界にあるスマートホンに代表されるようなAI技術は、まだまだこれ以下なのだ。
感情を持つAIが登場するすべてのSFにおいて、その感情がどのように芽生えたかなど、説明できているものはない。本作では、第1話にて、手順ミスによって発生する思考回路のバグは、何十年も積み重ねられ、偶然発生した“感情の種”が、その存在に気付かれないまま育まれ、後の人工知能にインストールされてしまうことで、多様な感情の発達を示唆している。
ケイは、感情を理解しようとし、エルのことを考えるうちに、彼女のこと自体が気になるようになる。恋愛感情とは、こんなところからスタートするのかもしれないが、やがてケイの行動にも変化がみられ、自らにも感情が芽生えることを、受け入れるようになった。
リンゴの木を植え替えた彼は、まだ人工睡眠で宇宙を行くエルにメッセージを送り、喜ばせようとしたり。インフィニチウムを掘り当てて自慢げに報告したり。後に、木いっぱいに実ったリンゴに感動して、その星を「アップル」と名付けたり。
それはすべて、親を喜ばせたい子供の感情、上司に認めてもらいたい部下の感情、女性にプレゼントを送る男性の感情と同じである。
作品名:L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開 作家名:亨利(ヘンリー)