久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下
フーマが訊く。
暖野は黙って頷いた。
大きく息をして、扉に手をかける。
その瞬間、フーマが厳しい口調で言った。
「よせ! 開けるな!」
だが、手遅れだった。
扉は一気に開き、猛烈な風によって吸い込まれる。
扉の向こうに半ば投げ出された暖野を、フーマが辛うじて繋ぎとめる。
風がおさまると、今度は下に墜ちそうになる。
「嫌よ! 怖い! 助けて! フーマ!!」
「暴れるな! 今、引き上げてやる!」
扉の先にあったのは、深淵だった。
ただ、真っ暗な漆黒の深淵。
「助けて!」
暖野は叫ぶ。
フーマが歯を食いしばり、懸命に引きずり上げようとする。
「え? な――なに!?」
足首を何ものかに掴まれている。
「やだ! これ、何なのよ!?」
「そいつに構うな! 俺だけを見ろ!」
「引っ張られてる!」
じりじりと二人は闇に引き込まれてゆく。
もう駄目だと諦めかけた瞬間、何を考えたのかフーマが闇に身を躍らせた。そして、暖野を思い切り抱き寄せ、唇を重ねてくる。
こんな状況で何をするの――?
だが、押し寄せてくる甘美な感情に、暖野はうっとりとして目を閉じた。
もう、これでいいと暖野は思った。
これが永遠に続くのなら、これでフーマと別れずに済むのなら。このままでも――
作品名:久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下 作家名:泉絵師 遙夏