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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下

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「そう……」
「お前は、どう感じてるんだ?」
「私は……」
 目を逸らす。「分からない」
「そうか……」
「ごめん」
「俺は……」
「とにかく、食べましょ?」
 せっかくのデートなのに落ち込んでしまう自分が嫌になる。みんなが気を遣って、お金まで用意してくれたのに申し訳ない。そんな気持ちだった。
「ねえ、この後、どうする?」
 正直、この町に何があるのかも知らない。
 前に来た時は、とにかくリーウに引きずりまわされた挙句、着せ替え人形にされていただけだったから。映画館ならあるかも知れないが、遊園地などの定番のデートスポットもありそうにない。
「お前は、どうしてほしい?」
「あなたは、どうしたい?」
「……」
 フーマがしばし、考える。「そうだな……。そう――」
 店内にいる人の視線を感じて、フーマが言う。「この衣装を何とかした方がいいのかもな」
 暖野は肩の力を抜く。
「そうね」
 制服姿の二人は、やはり平日のこの時間では目立ってしまう。それに、学院生が街に出るのはそうそうないのは暖野も知っている。
 お腹を満たした二人は、店を出て服屋を探すことにする。
「お前は、どんな服が好みなんだ?」
 フーマが訊く。
「あなたは、どんな服を着てほしい?」
「俺は、お前の好みを聞いている」
「分かってるよ。でも、私の好みなんて、たぶん、つまらないから」
「自分で決めつけるな」
「そうじゃなくて」
 暖野は言う。「リーウが言ってたのよ。せっかく違う世界に来てるんだから、今しか着られないものを着た方がいいって」
「そうか」
「だから、今日はフーマの見立てで選んで?」
「分かった。だが、俺は女の服がどういうものか分からない」
「私に着てほしいのを選んでくれたらいい」
「お前が気に入らなかったら、どうする?」
「それは気にしないで。フーマが私に、どんなイメージ持ってるのかも知りたいの」
 とは言うものの、フーマのファッションセンスはほとんどゼロに等しかった。
 彼の時代、衣服は実用性以外の機能は無く、イメージとしてのファッションは可能でも必要以上に自身を飾るという習慣はないとのことだった。
 聞いてみたところ、通いだから当然であっても私服は一切持っていないらしい。今日のデートでも、最初から制服で来るつもりだったそうだ。
 結局、暖野はまたも全ての選択を委ねられてしまう。こういう時こそ、リーウがいてくれたらいいと思う。でも、それはそれで問題がある。リーウが選ぶのは基本ロリ。暖野の趣味とはかけ離れている。
 では、どうするか。
 暖野は最初に見つけた衣料品店に入る。
 思い切って入ってはみたものの、雰囲気に呑まれてしまった。なぜなら、パーティー衣装の店だったからだ。
 見るからにゴージャスなドレスや飾り、靴、ティアラに圧倒されてしまう。
「暖野は、こういうのが好きなのか?」
 フーマが言う。
「ち、違うわよ!」
「じゃあ、どうしてここに?」
「フーマが言ってくれないからよ」
「俺が悪いのか?」
「悪くないけど……」
 言いながら、暖野はケースの上にあったティアラを手に取る。
 それを着けてみて、鏡に映す。そこには、初めて見る自分の姿があった。
 決して綺麗でも可愛くもない。
 それでも別の自分。
「どう?」
 暖野はフーマの方を向く。
「綺麗だ」
「それだけ?」
「似合っている」
「どんな風に?」
「それは……」
 それ以上の反応を求めるのは無理そうだった。それに、この店にあるものはどれも重そうで自分でも似合いそうにないと思う。
 暖野は他の店を探すことにした。