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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下

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 雷鳴は、雷が落ちてからしか聞こえないということを。
 だから、音はあてにならない。
 雲の中の気配を読むしかない。
 致命傷は負わなくとも、直接狙って来るはず。
 逃げ場はない。
 ずぶ濡れの二人が空中で対峙する。
 再び見える場所に現れた対戦者を、生徒たちが固唾を呑んで見ている。
 来たら、跳ね返せばいい――
 それなら、電光が放たれた瞬間こそが勝機かもしれないと、暖野は考えた。
 フーマ――
 暖野は思念を送る。
 だが、反応はない。
 やはり、力の共有と思念伝達は別なのだと暖野は思った。
 下は下で頑張ってくれている。
「助けたい?」
 アルティアが言う。
 暖野は返事をしない。
「助けてあげてもいいのよ」
 力の増大が感じられた。
「でもね――」
 アルティアの髪が逆立つ。「あなたが負けたら、それで終わりなの!」
「分かってる!」
 光の炸裂。
 暖野はアルティアのいる方へ向けて水流を放つ。
 しかし、その時にはアルティアは暖野の後方に回っていた。
 雷に打たれた地表から煙が上がっている。
 生徒たちの悲鳴。
 地表を覆っていた煙が徐々に風に流され薄れてゆく。
 教師が何か叫んでいる。
 音が、消えた。
 暖野は、そこに見てしまった。
「アルティア……さん?」
 抑えられない怒り。
 自分でも分かっていた。だが、どうしようもなかった。
「……許さない」
 アルティアがたじろぐ。それは、暖野の鬼気迫る雰囲気を見てのことではなかった。
 暖野とアルティアの間に火球が出現する。
 それは火花を散らし、急速に成長する。
「タカナシさん、私は……」
 先ほどまでの挑発的な口調とは打って変わって、戸惑いに満ちた口調でアルティアが言う。
 そんな言葉も表情も、今の暖野には通用しなかった。
 制御を失った力。
 暖野は無秩序に力を放つ。
 火球と同じ場所に水の塊。
 さながら水中に燃え盛る炎。
 炎と化した水。
 地上では、フーマとクーウェがようやく身を起こしたところだった。
 だが、暖野にはそれが目に入っていない。
「許さない!」
 一面が光の炸裂に覆われた。
 光そのものが圧力を有し、その中で無数の色彩が乱舞した。
 全てが、無音のうちに展開した。
 凶器と化した水滴が舞い、死の虹となってアルティアを包んだ。