久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下
三人一組でリーダーを決め、連携して捕まらないようにしつつ敵を捕らえる。誰が捕まえても良いがリーダーが捕らえた場合とサポーターが捕らえた場合ではポイントが異なる。リーダーが捕まった時点で他のメンバーが生き残っていてもゲーム・オーバーとなる。班のメンバーは、リーダーの術式に合わせて作戦を立て、チームを勝利に導く。隠れても良し、ひたすら追撃するも良し、倫理に反しない限り制限はない。また、降伏を装った偽装は許されない。
「これって、かくれんぼなの?」
説明後の作戦時間に、暖野は訊いた。「鬼ごっこじゃないの?」
確かリーウが言っていた。
「どちらでも同じことだ」
「どうして? 全然違う遊びよ?」
「かくれんぼの本当の意味は、見つけてもらうことにある。鬼ごっこは捕まえてもらうことに意味がある」
「ちょっと、わからない」
「どちらも、自分の存在を確かめる遊びだ。隠れても見つけてもらえない、目の前にいても捕まえてもらえなかったら、どう思う」
「それは、寂しい」
「そうだろう? それは、仲間の間で自分が必要とされている存在かどうかを確認するゲームだ」
なるほど、と暖野は思った。子どもの頃にしていた遊びは、ただ楽しいだけのものではなかったのだと。
「あの……」
すっかり忘れていたが、もう一人のメンバーが言った。「それで、私たちは何をすれば……」
その女の子は、確か――
「ごめん。名前聞いてなかった」
暖野は言った。
「クーウェです。クーウェ・イアテカ」
「クーウェさんね。ごめん、ちゃんと作戦立てないとね」
フーマに向き直る。「何か、いい作戦とかあるの?」
「ない」
むべもない返事に、暖野とクーウェは驚いた。
「ないって……」
暖野が言う。
「お前は好きに動け」
「好きにって……」
そこまで言って、暖野は気づく。「まさか、私がリーダー?」
「当たり前だ。お前しかいないだろう?」
「私、すぐに捕まっちゃうよ」
「そのために、俺たちがいる」
フーマが、クーウェの方を向く。「イアテカは確か――」
「偽装術なら」
「でも、偽装は――」
「禁止されているのは、降伏を装って相手をだますことだ。作戦としての偽装は認められている」
「好きにしろって言われても……」
「お前は敵チームを狙うだけでいい。面倒なら、待ち伏せするだけでも」
「で、フーマは?」
「お前が暴走しそうになったら、止める」
「暴走することが前提?」
「違う。勘違いするな」
フーマが言う。「これは絶好のチャンスだ。お前は自分の好きなように力を試せる」
「でも、その足じゃ――」
「この実習では、時空術以外はほぼ何でも使える」
「じゃあ」
「前のような力技は必要ない」
「分かったわ。やってみる」
「よし」
そしてフーマはクーウェに指示を出す。「イアテカは状況に応じてチームを偽装してくれ」
「分かりました。出来るだけ頑張ります」
「いや、全力でやれ。タカナシにも言ったように、これはチャンスだ」
「はい」
そうして、術を用いたハイド&シークが始まった。
作品名:久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下 作家名:泉絵師 遙夏