久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下
風が冷たくなっている。遠くの湖面が滑らかさと輝きを失っているのが見て取れた。
「分かりました。ノンノは中で待っていてください」
マルカは、トイの去った方へと急ぎ足で向かった。
それを見送り、暖野は灯台の建物に向き直る。ここはちょうど、浜への道の反対にあたるようだった。つまり、灯台の裏手ということになる。
山での経験から、暖野は雨が降り出すまでそう時間はかからないはずだと判断した。15分、いや、10分保つか保たないかだろう。
こんな状況で雨に降られるとは、まさに最悪だった。今まで全くそんな気配もなかったのに、ボートを失って船にも戻れないこの状況で。
低く垂れ込める雲。樹々を騒めかせる風。それらは必要以上に不安を煽った。
暖野はそれを振り払うかのように首を振ると、入口の方へと歩いた。
作品名:久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下 作家名:泉絵師 遙夏