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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下

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 ちょうどそこで、音楽がフィナーレを迎えた。
 踊っていたそれぞれが誰彼ともなく挨拶をする。アルティアと暖野も腰を落として、お辞儀をした。
「カクラ君の言ったことを、信じなさい」
 アルティアは、暖野の背を軽く押した。
 それまでのペアは離れてゆくのもあれば、そのまま一緒に話しているのもあった。それぞれがホールに散り散りになってゆく中、暖野はフーマとリーウの所へと戻った。
「もう、ノンノったら」
 リーウがふくれっ面をしている。「なんで私を誘ってくれなかったのよ」
「え? 私と踊りたかったの?」
「だって、友だちじゃない」
「うん。だけど――」
「放っとけなかった。そうなんでしょ?」
「うん……」
「で、アルティと何を話してたの?」
「この前のこと、ごめんって」
 暖野は当り障りのないことを言った。
「まだ気にしてるんだ。あの人らしいね」
 リーウは暖野の言葉を素直に信じているようだった。まあ、ショックで何日も学校を休んだくらいだから、アルティアならそう思われるのも無理はないのだろう。
 少しの間を置いて次の曲が流れ出す。今ので触発されたのか誰もが踊りたそうにしている。
「ノンノ」
 リーウに手を引かれる。
「待ってよ。私、まだ食べてない。それに、少し休ませて」
「そ、そうだよね」
 自分の性急さに、リーウが照れ笑いした。
 場所はフーマが確保しておいてくれたせいで、落ち着いて食べることができた。
「お前は、やっぱり美しいな」
 リーウが次の料理を取りに行ってから、フーマが言った。
「だから、その言い方はやめて。恥ずかしいから」
「素直になれ」
「ねえ、フーマは食べないの?」
 さっきから何かを口にした様子もない彼に、暖野は訊く。
「少しだけな」
「せっかくなんだから、一緒に」
「ああ……」
 しばらく暖野を見つめた後、彼は言った。「そうだな」
「さあさあ、お二人さん。今夜はじゃんじゃん食べていっぱい踊るのよ!」
 リーウは、他にアンカとキナタを伴っていた。3人とも両手に皿を持っている。いきなり宴会を始めようと言うのだ。今度はリーウ好みのものだけでなく、比較的バランスよく盛られていて、見ていて自然とお腹が鳴る。
 4人は円卓を囲んで料理を評したり互いを褒め合ったりした。フーマは一人、女の会話に入りづらいのか、それとも興味がないのか、少し離れて黙っている。
「ちょっと、フーマ」
 リーウが、そんな彼を肘で突く。「あんたも、ぼさっとしてないで」
「いや、お前たちが楽しそうだから」
「じゃあ、一緒に話したらいいじゃない」
「見ているだけでいい」
 彼の視線は、暖野を向いている。
「あ、そういうことか。でもまだ、ごちそうさましないからね」
 それまで談笑していた暖野は、ふと彼の視線に気づき、微笑んで見せた。
 曲は既に変わっていたが、今のところリーウは食べる方に忙しいらしい。調子に乗り易いキナタは、すっかりこの雰囲気に染まってしまっている。そんな彼女たちの中にいて、暖野も自然と楽しくなってくるのだった。今、この時点では、暖野は後のことを何も考えずに済んでいた。