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和ごよみ短編集

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正月気分もそろそろ抜けた頃、親父は仕事始め、おふくろは婦人会の新年会とやら、妹も友だちと買い物に出るとかで 家にはばあちゃんとふたりになった。
「もし、外に出ることがあったら、これを入れてきてくれない?」
差しだされたのは、二枚の葉書き。いちおう年賀状のようだ。
「しまった。俺も出さなきゃいかんやつがあった」
俺は、用意だけしてあった葉書きを取りに行くと、テーブルで書くことにした。
頼んでもないのに ばあちゃんが横にちょこんと座っている。(まあ いいか)
ふと、ばあちゃんの年賀状を見た。相変わらず達筆な整った字だ。
「あれ? ばあちゃん、これ年賀状でしょ。いいの?」

『寒中お見舞い申し上げます』

「届くのは明日以降ですもの、もう、明けましてや謹んでではないわね」
「そういうもん?」
「そういうもんよ」
俺も 少しは常識人になった気分で『寒中お見舞い申し上げます』と書くことにした。

「じゃあ俺出して、コンビニ行ってくるわぁ。ばあちゃん、何か要る?」
「そうねぇ、肉まん買って来てくれたら嬉しいかな」
「わかった。もし肉まんなかったらどうする?」
「任せる!」
俺は、ばあちゃんが手渡す小銭を断わりながら、ばあちゃんをじっと見つめた。
もしも、肉まんがなかったら、ばあちゃんには 何がいいかな?と探りながら。
結局、ばあちゃんから、肉まん以上の小遣いを受け取り出かけた。

「ただいまぁ」
俺の手元にぶら下げたコンビニのビニール袋の中には、ふたつの肉まん。いやひとつはピザまんだ。これは俺の分。
「じゃあ お茶でも淹れましょうかね」
「外、寒かったから俺の分も買ってきた。ばあちゃん、チョイスがナイスだね」
「時は流れても、そういうものよ」
「そういうものって どういうものよ」
「あぁ、さむぅー」
「そんな、今のは スベッてないって」
ばあちゃんは、湯気の上がるお茶を啜りながら、俺は氷をひとつ浮かべて冷ました茶を啜りながら、それぞれに中華まんじゅうを頬張った。
作品名:和ごよみ短編集 作家名:甜茶