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和ごよみ短編集

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料理を待つ間、店内をちらちらと眺めたり、おかみさんとお客様の会話を耳にしたりしていました。こんなゆったり和らいだ時間を過ごしている人たちがいるんだ、と羨ましいというか別の世界のようにすら感じていました。
「おまたせしました。ほっけの定食です」
「ありがとうございます」
真っ白なほかほかのごはんは、わたしが今日食べるために炊いたもの。まとめて炊いて小分けしたものを電子レンジでチンしたものじゃない。
このほっけの焼き魚は、わたしが注文して焼いてくれたもの。スーパーのいつ焼いたやら残り物の割引シールの貼られたものじゃない。
ごぼうの煮つけも、かぶの葉の和え物も、れんこんのはさみ揚げ、少し甘味を感じる味噌汁などどれもが わたしに用意されたもの。
「これ おまけ。はたはた」
小ぶりの体にやや頭でっかちな魚の焼いたものを出してくれました。
「すみません。美味しそうですね」
「まずは 食べてみてから美味しいかどうかは言えばいいのよ」
上司と話す時には、まずは気を回してから話し始めることが円滑な関係にいられると何となく刷り込まれていたように思いました。
「これは、頭から食べていいんですか?」
「カリカリバリバリかぶりついてくれたら嬉しいけどね」
わたしは、小さいときから祖母にも魚の食べ方がうまいと言われたことがありました。きっと魚好きの祖父の影響かなと嬉しく思っています。

「あのこの辺りは いつ頃から雪が降るのですか?」
人と話すことは得意ではないけれど、このおかみさんになら少し話せそうな気がしました。
「そうねぇ。まだしょうせつ過ぎた頃だから も少し先かしらね」
「しょうせつ?」
「ちいさいゆき。小雪って書いてしょうせつっていうのよ」
カレンダーで見たことがありました。そういえばと思い、バッグから手帳を取り出し開いてみました。
作品名:和ごよみ短編集 作家名:甜茶