和ごよみ短編集
そして翌年、チョロが同高校に入学することになり、役所に書類を取りに行くとき、何故か俺は、付き合わされた。そういやぁ、俺のってどんなことが書いてあったのかな……。それほど安くはないが 俺も書類を取ってみた。
そして、知った事実。じゃぁん。ドラマだぜ。
おやじが別れたと言ったおふくろのこと。離婚じゃなかった。なんだこりゃ? おふくろ死んだのか……。嘘だろ? いまさら何がどうなんだよ。大人になったら 逢ってみようと思ったこともあったのに。 俺はずっと… ずっといつも心の何処かでおふくろの面影を作っていた。チョロの母親と接するたび、俺のおふくろは どんな人だろうと描いていた。それなのに 思い出すらないじゃないか。
表面的には 平気に過ごしてはいたが、生活はただ流れていく出来事に 身を乗せていただけのような日々。おやじに対抗してひとりでやってきたつもりの身の回りのことも やる気が失せていた。気を紛らわすように遊んでみても 後悔が押し寄せる。春から夏になるように 気持ちが熱くなれば 空しさもまた増していた。
このままじゃ 俺は崩れる。いや崩れる前に 訊かなくては、気持ちの整理がつかない。
何を思ったか、俺は、おやじにではなく、チョロの母親に訊いていた。
持病で弱かった心臓が止まって、おふくろの友人とも言えるチョロの母親が手を貸してくれて、俺は此処までデカくなった。おやじの悲しみが 妻の存在を今なお 現世に残しておいたのだろうか。知らなかったことが一気に溢れた。粋がっていた俺もちょっとへし折れた。
「クンちゃん、明日からだよ。用意できてるの?」
「うっせ」
しまった。明日は服装チェックのある日だ。
秘密を知った高校二年生の春。おふくろのことに軽く衝撃を受け、春から夏の頃は、何もかもが面倒に感じていた。面倒それすらも無関心、何も感じない。恰好も大して気にならなくなっていた俺。秋の衣替えになって適当に脱いだままタンスに押し込んでしまった夏の制服はどんなことになっているだろうか。ま、いいや。なんとでもなれ……
俺は、そのまま連れと一緒に街へと遊びに出かけていって、帰宅したのは、仕事から帰ったおやじも 既に寝静まった頃だった。