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和ごよみ短編集

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中学校に入学して、俺は まだ小学生のチョロと別々の学校に通うことになった。保育園と小学生の時にはあまり意識しなかったのだが、少し開放感のようなものを感じた。
相変わらず、夕飯どきはチョロがやってきたが、俺は買い食いをしたり、家でカップラーメンを啜り過ごしたりと 大人になった気分に浸った。昼間、大人の留守宅は、連れのたまり場になった。俺もそれなりに 粋がってみせてきた。

そんなある日、家に連れが忘れた――わけはないか――落としていったのかコンドームが一袋。仕事から帰ってきたおやじに見つかった。今思い返せば、おやじに咎められたわけではなかったと思うのだが、あの頃の俺は恥ずかしさの裏返しで 勢い任せにおやじに食って掛かった。二、三言返ってきた言葉に思わず口を衝いて出た。
「おやじは、チョロのかあちゃんとできてるのか。寝たんか!」
その直後に左頬に火のような熱さと耳元に頭蓋骨から響いたような音…真近に落雷とともに走った雷鳴のような音のように感じた。
おやじは、俺の頬を叩いた手を握りしめ、何も言わず すぐに背を向けて風呂にはいっていった。その後ろ姿、肩で息をつくと ややその肩を落としたように見えたが、俺の思い違いと無視していた。おやじの姿が風呂場に消え、蛇口からの水音が聞こえてやっと俺は気付いた。
チョロの母親、そしてチョロの父親。いつだって俺に優しく接してくれた人までも裏切るようなことを言ってしまったのだ。

その所為というわけではなかったが、それから中学卒業までの俺は、わりと勉強はした。真面目になったというよりも おやじを見返したい。偉そうにおやじに言ってやりたいと思っていた。おかげかどうか 少々の素行の悪さも学力テストの点数で補い、まあまあ並の高校へと進学をした。
他校からきたやつらと付き合うようになると、俺の行動範囲も広く、それにともない横着な振る舞いも平気になっていた。不良というレッテル。別にいいじゃないか。どうせ、おやじだって素行が悪くておふくろに愛想つかされたのだろうから、同じ血筋さと生活の乱れも親の所為にした。

作品名:和ごよみ短編集 作家名:甜茶