忘却の箱
ごあいさつ
それは、確かにあったこと。
いつまでも続くと無邪気に思っていた幼いころの私。
哀しみの色に染まった、若い日の私。
言葉にされることなく、いつしか心の底に仕舞ったまま、忘れていた記憶の欠片たち。
ふとした拍子に見つけてしまった箱。
そう言えば、子どもの頃にどうでもいいような石ころなどを拾っては入れていた箱。
こんなものがあったことさえ忘れていた。
そっと開けてみる。
少しドキドキしながら。
小さな箱には、雑多なものが詰め込まれていた。
綺麗なもの、薄汚れたもの、一見どうでもよさそうなもの。
それらに手を伸ばすと、忘れていたはずの時間が甦る。
それでは、一つずつ見ていきましょうか。
小さなお話たちを。