おしゃべりさんのひとり言【全集1】
その43 取らぬ多肉の皮算用
多肉植物って、すごく面白いと思う。一儲け出来そうだし(ニヤニヤ笑)
3年前に、たまたま家にあった多肉植物を、単にサボテンみたいなものだと思っていた。
水やりするものなのかも、よく知らないし。
鉢に植えたまま放置してたら、だんだん細ってきて、思い切って水をかけたら、パンパンに復活した。
水やりは必要だったのか。でもこれ2年くらい水やってなかったな。
雨もかかりにくい軒下で、どうやって生きてたんだろう。
僕はこの生命力に興味をそそられた。
気になって多肉植物を調べてみると、葉や茎や根っこに、水分を溜め込める植物の総称が『多肉植物』で、種類のことじゃないらしい。
根に貯水できるのは『塊根植物』。『サボテン』も多肉植物だけど、一般的には塊根とサボテン以外を、『多肉植物』って呼ぶことが多いようだ。
その多肉植物には、エケベリア属、セダム属、アエオニウム属、クラッスラ属などさらにいっぱい分類があって、それぞれの交配で中間の属性まで存在していた。
うちにあったのは、グラプトペタルム属の「ブロンズ姫」って言う赤茶色い花のような形をしたやつだった。
この種はたまたま、もの凄く丈夫で暑さや寒さにも強く、そう簡単に枯れないようだ。
そのおかげで、多肉植物の不思議に出会えたってわけ。
ホームセンターに行けば、園芸エリアに多肉植物コーナーがある。
そこで300円しないくらいの安い苗ばかり、5~6鉢買ってみた。
ネット情報を信じて、栽培に挑戦し始めたんだ。
まずは細粒の鹿沼土、赤玉土、軽石に園芸用の土を2:3:3:4の比率で混ぜる。
基本はこの土で行く。(専用の土も売ってるけど、高すぎ)
苗の頭のてっぺんの塊をカットして、土に置いておくだけで、根が出て定着する。
・・・ホントかよ?
そして茎に残った葉っぱをいくつかちぎって土の上に置くと、その葉から根と芽が出てクローンが増える。
・・・マジかよ?
カットして鉢に残った茎からも、新しい顔がいくつか出てくる。
・・・リアリ~?
うん。全部本当だった。
これだと無限に増殖するし、増やすことが病み付きになっちゃう。
それからは、とにかく増える増える。面白いように増える。
しかも手間が全然かからない。
3年やってるけど、爆発的に増えた。
ちょっと前までは、カラフルな改良メダカの養殖をしようかと思って試してたけど、毎日のエサやりが面倒でやめちゃったのに。
多肉の水やりなんか、週一回どころか、月に一回程度でも枯れない。
肥料なんか不要で、砂でも育つ。
むしろ痩せた土で育てた方が、冬の紅葉が鮮やかな蛍光色みたいになることも分かった。
夏の光合成だけで、十分な栄養が作れるんだろうか。
注意するのは日当たりと風通しの方。はっきり言って自然任せなんだ。
どれくらいの品種があるのか調べたら、答えはなかった。無数にあるから。
最近は多肉植物ブームが来てるらしくって、新しい品種がたくさん作出されてる。
韓国では20年以上前から人気があったらしく、さらに多くの改良品種が存在していて、それも輸入され始めてる。
その韓国じゃ、見事な盆栽のようにアレンジメントしてる方もいらっしゃる。
日本人はあまりそれを知らなくて、苗の状態で栽培してる人がほとんどだ。
今からでも盆栽多肉の第一人者になれそう。(なってやる)
僕もいろんな品種が欲しくって、得意のネットオークションで購入してるけど、今じゃ4~500品種、千鉢くらいに増えちゃった。
千鉢って言えばそう生易しいもんじゃない。
今はとにかく、置き場所問題に直面しているんだ。
3畳ほどの広さの温室を庭に建てて、3段のスチール棚を並べて置いているけど、下の段は日当たりが悪い。
そうすると半日陰でも育つ品種が判ってきた。
そのうちにネット情報のウソも分かってきた。
今、多肉が熱いので、それを語る初心者がとても多い。
(おっと、僕もその一人だね)
バラやランなんかの園芸家が書いてる多肉の解説本なんか、ウソばっかり。
売れるから、出版社が書かせただけなんだろうな。
その通りにやったら増えない。紅葉しない。間延びして形が崩れる。
普通の草花とは、根本的に違う性格の植物なのだ。
僕は本当に毎日多くの情報をチェックして、一番効率よく、うまくきれいな多肉を増やせるように研究中なんだ。
なぜそこまでするかって言うと、ある計画を思い付いたからだ。
この先、定年退職したら、これ栽培して売ろうって、10年計画を立てたんです。
仮に苗一つが100円で売れるとしよう。
(実勢価格は品種によって様々だけど、一番普及している安いヤツで考える)
それが、春と秋に成長期が訪れる。
つまり増やすチャンスが年に2回来るんだ。
1年で何株に増やせると思いますか?
僕は「虹の玉」って言う、小さ目で赤い人気の品種の葉っぱを土に撒いておいたら、10株以上に増やせた。(これでも1,000円になる)
先述の「ブロンズ姫」なんか、実際に50株以上増やせた。(売上5,000円確定)
もし控えめに、1株が1年間で5倍になるって計算してみ。
毎年それが5倍に増えると、10年で200万株になってるんだ。
つまり100円で売ると約2億円!
たった一品種でもこの金額!!
これなら実家の田んぼすべてを温室にしてもイケる!!!
僕はこれをやってやろうと思う。いや、やります!
逆に言うと、10年かけないとこうはならない。
単に仕入れて転売してるだけじゃ、利益率は無茶苦茶悪いはず。
そのためにいろんな品種をお試し中です。
夏の暑さに弱いヤツや、冬簡単に凍るヤツ。梅雨の時期の蒸れに弱いヤツ。大体解ってきた。
よくネット取引されてる人気品種も分かったけど、栽培が難しいのは手間が嫌で放棄。
とにかく手間いらずで、見た目がきれいな品種ばかり、30種類くらいのセットにしても3千円~5千円くらいで売れる。
いろんな種類を色とりどりで、一つの鉢にぎゅうぎゅうに寄せ植えするのが圧巻!
レアな品種のセットなら、数万円で取引されてる。
このレアセットだけでも月に10セットも売れたら、定年後の小遣いにしては優秀。
なぜ今までこのビジネスに手を出す人がいなかったのか?
たくさん作っても、販売ルートがないからだ。
でも今はネット購入が当たり前の時代。
自分がネット販売に参加するのも悪くないでしょ。
こんな夢を語ってたら、周囲に手伝いたいって人が徐々に現れてきた。
妻は、多肉植物をモチーフにしたカフェまで計画してる。
老後も面白くなりそうだ。
作品名:おしゃべりさんのひとり言【全集1】 作家名:亨利(ヘンリー)