おしゃべりさんのひとり言【全集1】
その42 痛い体験
中学の頃、どんくさい友達がボールを蹴ろうとして、地球を蹴って骨折した。
足首がグニャリと曲がってた。
見てるだけで、『イタいイタイ件』
同じ年に僕は「気を付け」の姿勢でプールに飛び込んで、地球に頭突きして全身痙攣した。
体が全く動かせず、水中に血が吹き出て死んだ。と思った。
まさに水中で、『遺体体験』
これらの『痛い体験』
どっちの方がより痛いと思いますか?
僕も友達も全く譲らなかったけど。「僕の方が痛い」「いや俺だ」
痛さの度合いはどうやって測ればいいんだろう?
痛みに強い人や弱い人。刺すような痛さや鈍痛など種類もいろいろ。
どんなに痛いと主張しても、他人にその痛みは分らない。
特にお医者さんにはね・・・。
知り合いに聞いた中で最も痛そうだったのは、朝に寝ぼけて口に突っ込んだのが、ハブラシじゃなくてカミソリだった話。
詳細は割愛しよう、寝れなくなるから。
転んで泣いた小さい子に「よかった! 血は出てない。大丈夫! 痛いだけだ」って強引なこと言ってやれば、冷静になって泣き止ませることができる。
本当に痛かったのか、びっくりしただけなのか判らない時もあるしね。
でも「女は痛みに強い」って言うよね。
出産する時の痛みって男には解らないけど、出産経験のない女性にも同じく解らないはずだよね。
でもそう言われるのは、なぜ?
女は出産に対する心構えみたいなものがあって、つべこべ言い訳しないから?
それに対して男は、普通に生きてたら痛みなんか経験する予定がないから、心の準備が出来てないってことかも?
根性論みたいなもんで、予想してないと、精神的に強くなれないのか。
予想もしない突然の痛みで思い出したんだけど、子供のころカーペットに寝転がってたら、突然片方の目に強烈な痛みが襲った。
尋常じゃない痛みでジリジリするような感じ。涙もあふれ出るけど痛みは続く。
慌てて駆け付けた母さんが、僕の目玉をよく見て「血が出てる」と言った。
何かが目に刺さったのか。擦って傷が付いたのか。
鏡で確認すると、1㎜くらいの赤いのが白目に付いてる。
でもよく見ると血じゃない。
指の先でそれを触ると、指に移った。
どうやらトウガラシの破片だったようだ。
七味か何かがカーペットに付いてたのが舞って、目に入ったみたい。
しかし、すごく痛かったし怖かった。
こんな痛みをスリルとして、意図的に痛い体験をする人もいる。
我慢の美学ってやつかな。
まるでアントニオ猪木のストロングスタイルみたいだ。
確かに唐辛子の辛みは、舌の上で、はたまた喉の奥で痛く感じる。
激辛唐辛子を噛むと、何十分かはヒリヒリする感覚になる。
激辛料理になんか僕は興味ないけど、それを売りにするお店もあるくらいだから、その趣味の人には楽しいんだろな。
ある一定の度合いを超えた辛みは、脳が痛みと錯覚するんだろう。
痛みで気を失うことがあるなら、唐辛子で気を失う人もいるかもしれない。
そう言えば、氷も痛い。
敢えて氷水に手を浸けていると、痛く感じる。
その手を寒風にさらすと刺すように痛い。
でも、これも錯覚だろう。
辛みも、冷たさも錯覚ならば、考えようによってはその苦痛を克服できるんじゃない?
「心頭滅却すれば火もまた涼し」じゃないけど。
あ、でも無理だ。
かき氷食べて頭がキーンの時、どう考えてもあれには勝てないや。
作品名:おしゃべりさんのひとり言【全集1】 作家名:亨利(ヘンリー)