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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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おしゃべりさんのひとり言【全集1】

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1週間が過ぎた。やっと携帯キャリア会社の修理サービス担当者から電話があった。
「修理費、8万4千円かかります」
「どういうこと?」
「液晶のアッセンブリが破損していますので、交換が必要ですので・・・」
金額もさることながら、破損の原因は、僕にあるってことだ。
「修理費がそんなにかかる根拠は何ですか?」
「メーカーの調査結果で、そのような報告が出ているとしか言いようがございません」
「落としたり雑に扱っていませんよ。24万もする機種が、ポケットに入れていただけで壊れて、修理が8万円っておかしいと思いませんか?」
「はい確かに高額ですが、私からは何とも申しようがありません」
「その修理代なら、iPadが買えますよね?」
「お客様はこの修理代にご納得いただけないということで、一旦担当者と話しまして、改めてご連絡させていただきます」
とまあ、こんなことになった。
ぼくはある程度こうなるとは予想していたけど、3万円くらいなら修理頼もうと思ってた。でもハイテク部品の相場を知る人間として、僕には8万円の高額修理代は予想外だった。
僕のことをよく知る人なら、「僕は10万円以下には執着しないと決めて生きている」ので、(その修理代払えよ)って思うかもしれませんが、その金額じゃなく、IT業界の押し付けに対して疑問が湧いたから、こんなやり取りをしてしまったんだ。

★ここで余談だけど、販売済みの製品の保守サービスで儲ける『ポストセールス』というビジネスが存在する。企業ごとの事情は分からないが、はっきり言えることは、ポストセールスを本業とする部署を持つメーカーは、製品販売の売上げ以上に、保守サービスで稼ぐというようなこと普通だ。(例を挙げれば、乗用車販売後にメンテナンスサービスで儲けようとするカーディーラー)
でもこの手法を少額商品に対して用いている企業など、悪徳企業のレッテルを貼られるくらいに聞いたことがない。スマートフォンの価格って、その微妙な線なんだろうな。
果たして、この高額の修理代見積りで得をする企業は、スマホメーカーなのか、携帯キャリア会社なのか?

また後日電話がかかってってきた。
「申し訳ございません。やはり最初に保険に入っておられませんでしたので、無料交換サービスをお受けになることはできません」
「その保険がなければ、保証も受けられないということですか? メーカーが1年間の保証を付けているじゃないですか? あなた方が言う保険って、サービスを手厚くしたり、その期間を延長するものじゃなく、保証そのものを受けるためのものだったんですか?」
「そういうわけではございませんで、破損の理由次第となりまして・・・」
「だからメーカーが、破損の原因がこちらにあるという根拠は何ですか?」
「それは一度そのように報告されておりますので」
「ということはその原因の再調査は、行ってもらえなかったっということですね。と言うより、『しても無駄』という前歴が今までにもあるんですね」
「はい、おっしゃる通り、難しいケースでして」
「御社とメーカーの間でどのような契約になっているのか知りませんが、メーカー保証は御社を通すと利用できないことがわかりました。直接メーカーに問い合わせることにします」
「あ、それができない契約になっておりまして、お客様の窓口として私共を通してしか、こういったサービスに対応できないのです」
「じゃ、御社はメーカーの横暴の『バリア』としての役割を担っているわけですか?」
「・・・お客様、お時間をいただいてばかりで恐縮でございますが、もう一度上の者と相談させていただきまして、改めてご連絡をさせていただきたいので・・・」
「はい承知しました。善処してください」

★ここらへんで業界の事情が見えてきた。メーカーとしては、(無料交換の保証を付けているかのように見せかけているだけじゃないか?)って気がしてならない。実際にはそんな保証を適用するようなことは稀で、携帯キャリア会社に断らせている。二つの企業間でそんな契約になっている(ような気がする)。だから携帯キャリア会社は、ユーザーに別途保険に入らせて、その交換や修理の費用を捻出するしかないカラクリなのかもしれないな。(あくまで僕の想像ですけど)

次に電話があったのは、修理サービスの責任者という男性からだった。それまでの担当者とは明らかに話し方が違う。経験の豊富さを感じた。
「お客様は、修理代金にご納得いただけないということですが、破損の原因はご自身ではなく、端末の保証が受けられないことに、疑問をお持ちということでよろしかったですか?」
こういう聞き方をしてきた。これは苦情の内容の再確認だが、事実のみの確認であり、あれこれ説明を必要としないことを僕は承知している。
だから、「はい」とだけ答えた。
「今も修理を希望されていますか?」
「もちろんです」
「ではそのことに関しまして、今後ご提案できることは限られておりまして、それでもご承知いただけない場合、私共としましても、他にお力になれることがございません」
「24万円の端末を、たった4か月で廃棄する気はありません。納得のいく説明と金額でなら、修理したいと考えています」
「破損に関しましてはメーカーの主張以外、私共がどのような見解を申し上げても変わることはございません」
「それなら修理方法については、リサイクル部品を使うとか、もっと違う修理工場を紹介していただくとかできませんか?」
「それでも金額に付きましては、今ここで、いくらと言うことはできそうにはございません」
「修理代ができるだけ安くなるに越したことはありませんが、町の修理屋さんなら2万円ほどで液晶交換できるようですが、そんな金額は御社では無理ですか?」
「実際に修理してみないと判りかねます」
「ではできるだけ安くつく方法で、何ならポイントがたまってると思いますので、それを全部使用してでも、持ち出し金額を抑えたいです」
なんか業者同士のかけ引きみたいになってきたけど、こういう話し方の方が、この責任者とはスムーズに会話ができた。
無理なクレームでゴリ押しするようなことは、逆にマイナスとなるので、それは絶対に避けないといけない。こういう場合は相手の煩わしさを、できるだけ簡単に済ませてあげるような提案をこちらからすることで、妥協案を提示してもらいやすくするべきだ。
「さらなる保証をお受けになるためには、購入時に保険に入っていただく必要があったのですが、それはご存じではありませんでしたか?」
「保険があるのは知っていました。でも保証を受けるためのものであるとは、認識していませんでした」
「そういった説明は受けられなかったのでしょうか?」
「ネット購入しましたので、理解していませんでした」
「そういった説明文を読まれませんでしたか?」
「私はもう50を超えていますので、ネットの手続きもそんなに得意ではありません。もしお店で購入していたとしたら、説明を聞いて保険に加入していたかもしれませんが」
これは咄嗟に出た、口から出まかせだ。
「それなら、今からでも保険に加入されたいですか?」