Riptide
用意した全てを一身に背負った田井は、裏口から出て、力試しをするように塀を乗り越えた。何百回と往復した、林への最短距離である石の階段。上がりきったところでひと息つくと、田井は柵の一部になっている、扉の鍵を開けた。『次にイノシシが出たら』という言葉を、数年間頭の中で繰り返している内に、思いついたことがあった。それは、次に現れたイノシシは、どこへも逃げられないようにするということ。田井は、電源ボックスを土中の保管箱から取り出すと、配線を束ねている紐を解いた。するすると伸びる配線が絡まないよう注意を払いながら、電源ボックスごと柵の内側に入った田井は、扉の鍵を閉めた。
電源のツマミを『連続』にセットし、通電を示すランプが灯ったことを確認すると、まずは体を慣らすために、林の中を歩き始めた。