オヤジ達の白球 61話~65話
この2つの分類は少々厄介だ。
雪見障子はつねに下半分から外が見えるもの。
猫間障子は小障子を降ろせば、すべてが障子のように見えるもの。
と解釈すればよいだろう。
生垣の上に積もった雪が風にあおられ、どさりと落ちた。
「ねぇ祐介。知ってる?。雨と雪のちがいを」
陽子が4本目の熱燗を持ち上げる。
「あめかんむりは、空から落ちるしずくをあらわしたもの。
雨の下にヨという文字を書き足すと、雪になる。
このヨは、箒を省略したものなの。
白く降り積もった雪は、箒で掃くことができる天からの贈り物という
意味になる。
しずくは地面に浸みこんで消えるけど、雪は掃くことができるのよ」
「雪は掃くことのできる天からの贈り物か。なるほどね。
だけどよ。どうやら箒じゃ掃けないほど積もって来たぜ、この雪は」
「どのくらい積もったかしらねぇ?」
「30㌢は越えたかな?。ここまでの雪を見るのはひさしぶりだ」
「ホワイト・バレンタインデーのはじまりかぁ。
うふふ。なんだか、いきなりロマンチックな展開になってきましたねぇ」
陽子が小障子をパタンと降ろす。
外からの寒気がいっきに遮断される。
室内にあたたかさがよみがえってきた。
「よほど冷えていたんだな。
小障子を降ろしただけで、急に、部屋の中があたたかくなってきたぜ」
「あら、そう?。わたしはそれほど感じないけど。
鈍感になっているのかしら。熱燗のせいで、酔っぱらっているのかな?」
「酔ってるみたいだ。目元がほんのり赤くなってる」
「酔っぱらったついでに、本音を吐いちゃおうかな」
「おだやかじゃないねぇ。なんだ、本音というは?」
作品名:オヤジ達の白球 61話~65話 作家名:落合順平