不可能ではない絶対的なこと
「そうでしょう? でもこれもあなたの遺伝子に受け継がれているものなんですよ。あなたの父親も似たような発想を持っている。それもある意味不可能ではないことに近いと思うんです。ただ、絶対というわけではない。だからあなたには理解できないんでしょうね。理解できないから納得できない。それが父親へのトラウマであったり、自分の中のトラウマとして残っている。死というものを考えれば、その呪縛から解放されるかも知れないと私は思います」
「でも、絶対ではないんでしょう?」
「ええ、絶対という言葉は死にしか使いません。それは先ほども言いましたように、忘れてはいけないことなんですよ」
と彼女はそう言って、少し黙り込んでしまった。
明日美はそのことを考えながら、最近の自分を思い起こしていた。
確かに宗教団体に意識が向いていたのも事実だし、同窓会で超学生の頃のかくれんぼを思い出したのも事実だった。その時、何か頭に引っかかっているものがあった。それが親への確執だったと考えれば、自分を納得させることができる。
父親との確執が解消されるとは思えないが、少なくとも自分を納得させることができた。だからと言って、この団体に入信しようとは思っていない。私と話をしたこの彼女にもそこまで考えている様子を伺うことはできなかった。
――まるで夢を見ているようだ――
と考えると、自分の夢に宗教団体の彼女は入り込んできているように思う。
すると次に考えたのは、
――私も誰かの夢に入り込んでしまうんだろうか? そして、彼女と同じようなことをいうのではないか?
と考えると、死というものを本当に怖くないものだと感じるようになっている自分がいることに気が付いていた……。
( 完 )
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作品名:不可能ではない絶対的なこと 作家名:森本晃次