【詩集】 蒼い風
残照
君と一緒に数えた港を見おろす神社の石段
いま、ここに立って君の笑顔を思いだそうとしても
眩しい夕照を見つめる優しい後ろ姿だけ
逆光の君は僕の言葉で静かに振り向くけれど
その長い髪が茜色の空に溶けるように広がって……
君の姿はそこで消える
淡くほのかな翳りを残して
夕陽に輝いていたあらゆるものが
たちまちその輝きを青い宵闇に潜めてゆくように
君はどこへ行ってしまったのか
いや 遠く離れたのは僕の心だったのかもしれない
あのとき君のこぼした涙のしみは
いまも僕の心に残っているのだから