【詩集】 蒼い風
思い出の宝箱
秋の野原を赤い電車が走り抜ける
そよかぜのように
海を見おろし光るさざ波
窓に受けて鏡のように
忘れかけてた夢を探して
旅に疲れた思いを揺らす
数えきれない人の吐息を
色褪せた椅子にしみこませて
あふれる情熱の風それさえ
その身にたたえながら
夢は遙かに時を超えて
今に伝える懐かしい風
木々のさざめき潮風の詩
丘のたそがれ金色の風
時の流れに忘れ去られて
昔のおもかげ今も変わらず
あなたと過ごしたほんの一瞬が
ここにはいつもある
あなたと二人揺られながら
海を眺めた懐かしい窓
淡い光に頬ほてらせた
二人映した古ぼけた窓
潮の香りをいつもいっぱいに
この窓を開けて感じていたけど……
今はもう壊れて開かない窓も
私には開けられる
いつしかまたこの場所で
あの懐かしい汽笛が聞こえたとしても
それはもう人の心に眠る遠い幻
さよならなんて決して言わない
さよならなんて言いたくはない
ここには私の思い出のすべてがあるから
私のすべてをしまい込んだ
私だけの思い出の宝箱