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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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欠けた月の暗闇の中

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加奈は廣木の個展の最終日、マスカット色のドレスを着た。無理を言い、2日で作らせたのだ。加奈は廣木に自分の魅力を認識させたかった。曲はショパンの『ワルツ第9番 変イ長調』に決めた。あえて悲恋の曲を選んだ。
 加奈の演奏も観客を魅了させたが、やはり加奈の容姿はオーラを感じさせるものがある。演奏が終わると、加奈のサインを求める列ができた。
 その1人が宮本誠二であった。彼は旭川動物園の帰りであった。気ままな1人旅なのだ。73歳になる彼は、40歳の時に離婚し、それ以来独身であった。インターネットで女性のショーツを売り、それがヒットしたのだ。もちろんオリジナルのもので、誕生日や結婚式、初夜、ラブラブ時のものと言ったものであった。刺繍やプリントもその雰囲気を感じさせるデザインである。
 彼は加奈のドレスからかすかに見えた、ショーツのラインが気になったのだ。体にフイットしていたために、体を移動するたびにショーツのラインが見える感じがしたのだ。宮本は心の中で『穿かなければよかったのに』と呟いた。
 宮本はサインをしてもらうハンカチを出し、サインが終わると、名刺を加奈に渡した。名刺には自分の名前の下に『下着のラインが見えました』と書いたのだ。
 加奈はサインに夢中で、彼の名刺は受け取ったが文字まで見る余裕はなかった。
 廣木の打ち上げがあり、加奈は廣木から誘われることを期待していたのだったが、廣木も疲れていたのだろう。
「今日はありがとう」
 と言って別れたのだった。
 加奈は旭川まで帰るつもりであったが、アルコールを飲んだこともあり、ホテルに泊まることにした。
 偶然に加奈と宮本はロビーで出会った。加奈は宮本に気が付くことはなかったが、宮本は加奈だとすぐに判った。
「本間加奈さんですよね。バイオリンの・・」
「はい」
「サインいただきました。その時名刺をお渡ししたのですが・・」
「そうでしたか、ごめんなさい。忙しかったので、まだ見ていないんです」
「失礼かとは思ったのですが、演奏の時、下着のラインが見えていたのです」
「セクシーでしたかしら?」
 宮本は意外な加奈の言葉に戸惑った。
作品名:欠けた月の暗闇の中 作家名:吉葉ひろし