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時代の端っこから

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あとがき



 平成27年、「明治日本の産業革命遺産、製鉄・製鋼・造船・石炭産業」端島を含む地域が世界遺産として認定されました。明治期以降の日本が欧米の列強と肩を並べる成長の基礎を作った努力の遺跡です。
 たまたま著者の住むところで端島の出身者がいらっしゃったので、その方から当時の生活などをお聞きする貴重な機会があり、本作を創るきっかけとなりました。

 先述の世界遺産を認定するにあたり最も注目されたのがこの島ではないでしょうか。

 良くも悪くも、他国からクレームが付けられるくらいですから、そこには明と暗があったと言えるでしょう。しかし、実際に長崎で見た端島に関する資料や、元島民の生き字引の方々の話を聞く限りでは、小さな島であることと当時の東京よりもはるかに高い人口密度から考えて、確かに閉鎖的ではあったでしょうが、島の生活は時代を飛び越えて機能的であったと思いますし、ある意味で「理想郷」といえたかもしれません。
 ですので、他国が主張するような「特別な」位置付けの場所ではないと感じたどころか、むしろそのようにしか捉えることができない考え方に寂しさを感じます。

 と言いますのも、筆者は平成21(2009)年の8月に端島を目指して船に乗った経験があります。同い年の大学時分の友人とバイクを転がして長崎へ行きました。そして、軍艦島ツアーに参加して20世紀のイーハトーヴとも言える端島をめざしたのです。昭和49年に無人島になって以来初めて一般にも観光ができることになったのです。本文にもありますがその当時で35年間も風雨に晒されて放置されており、崩落の危険は多分にあったため島内を自由に巡るわけにはいかないのですが、それでも筆者の冒険心をくすぐるには十分でした。
 さらに言えば、島が閉鎖されたのは昭和49年の4月。筆者が生まれた年と月と同じなのです。著者が生まれてすぐに閉鎖されたことになります。ですから、ここには他ならぬ縁のようなものを感じていました。

 有明海にポツンと浮かぶ動かぬ戦艦――。その昔、米軍が端島を本当に戦艦と間違えて魚雷を撃ったとも言われています。筆者の見る限り、遠くから見ればまさに『軍艦』なのです。

 しかし残念ながら当日は天候には恵まれたものの海は時化で接岸並びに上陸は困難とのことで、元島民の解説と供に眼前に広がる理想郷を拝むだけでした。 
 当時から端島を世界遺産に登録しようという運動はあって、登録に向けたPR活動やインフラの整備が進められていました。その一環として、「軍艦島上陸ツアー」なんてものもちょうどその年から始まったと把握しています。

 
 世界遺産に登録されれば世界の注目が集まります。日本という国が19世紀から20世紀に移る頃、そこであった歴史や実情、当時の問題点など、21世紀を生きる我々が学ぶべき事はたくさんあると思います。これが未来への遺産なのか負のそれなのかは現地でご覧になっていただければ、敢えて答えは出さなくても明らかであると思います。

 当然ながら、日本がこの場所を世界遺産にしたことで、どうたち振る舞うべきかということも然り。

 そして、それを公開することにより新たな意見が得られ、これからの世界の発展のアイデアに繋がってくれる事を切に望んでいます。


 ありがとうございました。八馬八朔でした。

作品名:時代の端っこから 作家名:八馬八朔