カエル
腕時計は午前3時を回っていた。
私は辺りを月明かりで見渡す。
東京に帰るためには、まずは現在地を知る必要がある。
バス停の標識があったので、ここの停留所の名前を確かめてみた。
停留所の名前は「ドン詰まり前」であった。
四方に広がる水の抜けた田んぼ。
割れたアスファルト。
倒れた信号機。
黒焦げた廃車。
割れたガラスの破片。
カラスの死骸。
黒い塊。
骨が2本しかない破れたビニール傘。
そして。
全く聞こえないカエル達の鳴き声。
「カエル…」
私は瞳を閉じてみても何の声も聞こえないこと悟った。
そしてもう元には帰れないことを知った。