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皮膚の下は他人

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初めてみる神々しい景観だ。高瀬川の舟入の堰止めだ。そのままにしておこうと決めた。指をおめこの周囲にすべらせる。毛のない肌はつるっとしていて気持がよい。肌が吸い付いてくる。剃り跡の手触りがあり、脱毛ではなさそうだ。
「きれいね」
「うれしいです」
「鑑賞されているようで興奮します」
「むこう、むいてくれますか」
女が男に背中を見せた。お尻がまるまるとしていて、ウエストがしっかりくびれているから、量感があって美しい。
「こっちむいてください、剃ってるんですか」
「気持ち、いいでしょ、主人の趣味で」
「自分で剃るのですか、わざわざ剃ってきてくれたのですか」
「いつも剃っているの。旦那がすると、けがしそうになったのでね、自分でした方が安全できれいに剃れるから」
女は剃毛が意外に難しいのだと解説する。
「今日も剃ってきたのですか」
「そうよ、手入れしておいたわ。男の人も喜ぶし、感じやすくなるし」
花芯の周囲に舌をはわせる。剃毛が習慣なら、今日の逢瀬による家庭のトラブルはないだろう。
「あー、あー」
と女が深くため息を吐く。

5言葉で責める、煽る
女の変化をたしかめ、楽しみながら、男はこの女の旦那が側にいて一緒にあれこれ指示しているような錯覚を覚えた。不思議な感覚だ。剃毛を介して、この女とともに別の男がいるのだ。競争心とか嫉妬心が湧きおこってくる。男がいるのなら、この女を責め抜こうと考えた。
剃った跡がしみのように残っているが、もともと肌がきれいなのだろう、湿っているからぴたぴたと男の指になついてくる。くっついて、肌と手が親しくなっている。
舌や口を使って、毛のない花芯をなめまわして味わう。舌や唇がすべるように丘からお尻まで、皮膚の上を動く。
「気持ち、いいです」
と言葉を投げかけながら、身体もはげしく反応する。
「横になっていいですか」
女は耐えきれないという風情になって、からだを横たえた。横たわると女はみずから足を開く。花芯は決壊していた。
男は花弁を口に含む。吸う。神聖な気分にひたる。
「指を入れてください」
タイミング良く、次の行動を提案してくる。男はこの女の性交の歴史に思いをはせながら、女の求めに応じて、指を入れる。
女はどんな男とつきあってきたのだろうか。女の望みをかなえながらも、男は反撃の機会をうかがう。なにか乱暴に扱いたい野蛮な衝動が、危険な性欲が沸き起こってくる。
「あーー」と女が反応する。煽られて男は指を二本にして硬さをます。指が二本になると、男根が入っているように感じられるのだろう。
「あー、いい」
「そんなにいいのか」
「いいわ」
指をしっかり出し入れしながら、クリトリスをなめると、身もだえして反応する。男が女の顔をたしかめると、恍惚の表情に変わっている。まだまだこれからだ、時間をかけてゆっくり楽しみたいと考えた。
「指でいけそうか」
「指でいけそうです」
「いやらしい女やね」
「いやらしいですか」
「いやらしい」
クリトリスを舌でべったり上下にローラーしながら、指を小刻みに振るわしてバイブする。
「あー、ああー、あーー」と叫び出す。
女自身が収縮して指を締め付ける。女はいったようで、うつろな表情に変わる。
しばらく、女の表情を眺めてから、男は話しかける。
「指でいったのか」
「指だけでいきました」
再び、クリトリスをなめて、指を出し入れする。
「あ、あ、あーー」
女はいい声を出す。男もがんばる。
もっと、責め立てよう、それだけの価値がある身体だ。
「旦那にこうしていかされたのか」
となじった。
「いった」
「いちばん、いいのか」
「いちばんいい」
「ここが覚えてるんやな」
「覚えてるから、いけます」
「ほかの男の指でもいけるのか」
「覚えてるからいけます」
男は頃合いかと思い、クリトリスを責める。もう感覚が鋭くなっているようだから、やさしく触れるように舌を使った。舌を使いながら、指の出し入れを力強くする。女性自身が再び収縮する。
「あーー、あーー」と上り詰めた。
しばらく、気の抜けたような表情の女を横で眺めていた。そっとしてあげる方がよいと男は考えた。深い達成感が生まれた。
じっと眺めていると、女は目をあけて、男に笑いかけた。何という余裕だろうかと、男はただ感心した。いったようでいってないのだ。これまでの女とはまったく違う。
「よかったか」
「よかったです」
「お酒、呑もうか」
「のみたいわ」
女はもう、もとの普段の顔に戻っているから不思議だ。女はぐいぐいと呑みすすむ。呑みすすみ、ほろ酔いかげんになった。酔わせたらおもしろいだろうと男は思ったが、まだまだこの女を楽しみたいから、ほどほどにしておいた。
疲労感が女を睡魔に誘ったようで、女はうつむけになって眠り込んだ。女の背中はとても若い。首筋から肩へ、その造形はやさしいが力強い。

6ベルトでたたかれ喜ぶ女
男は女の眠りを見守った。不思議な女だ。これまでに会ったことがないタイプだ。セックスを対等に楽しもうとしている。世の中に恋愛の自由があるなら身体こそ、その自由を欲しているのかも知れない。官能小説の主人公のような女性は実際にはまずいない。もっと静かな、ゆっくりと燃えていくのではないか、男はこの女と絡み合いながらそう思った。賢いから、言葉や想像力を使い切ってくる。男にも余裕が生まれてきて性交の時間が延び楽しめるようになる。身体も人格も味わうことができる。
まったく新しいセックスのパターンだ。
男はこの女を楽しむため、次の場面をどうしようかと思案した。お尻をなでながら、肛門をたしかめる。穴の周囲がすこしめくれているようで、興味を抱いたが、もっと刺激的で激しい責め、究極の愛撫を思いつく。
ズボンからベルトを引き抜いて、軽くたたいてみた。酔ってるから、感覚が鈍くなっているはずだ。
はたして、女は受け入れている。軽く何度かたたいてみたが、抗わない。それならと、強めにたたく。けっこう大きな音がする。もう深夜だから、音が小さくなるように、ベルトを縮めて半分を使うことにした。
ぴた、ぴた、とたたく。
お尻が赤くなる。音が気になってしまい、攻撃性が弱まり被虐の効果がでてこない。加虐の感情も火がつきにくく、男はここいちばん、言葉責めを併用すべきと考えた。
「たたいてって、言ってみろ」
と男が言う。
「たたいて」
と女は小さな声でくりかえす。
たたく間隔が短くなっていく。
「たたいて、たたいて」
と声をあげる。
女の声にうながされて、ベルトたたきをくりかえす。男は女がこういうことになれているのではないかと、深く嫉妬した。意外性がない。そう思えば思うほど、男の中に暴力的な不条理な感情が沸き起こり、頭がスパークする。
もっと強烈な責めを思いつかなければ、まったくおもしろくない。この女のようなからだはめったに出会えない素材だ。
男は女を仰向かせる。
「濡れてるやないか」
女をことばでなぶる。
花芯に手を触れながら、女の被虐をあらわにしてしまう。
「たたかれても気持ちいいんです」
女は動じない。頭がしっかりと働いている。言葉で返してくる。奇妙な落ち着きぶりだ。
花芯にベルトをあてる。ベルトが攻撃する予告だ。女の反応をたしかめるが、拒む様子はない。
作品名:皮膚の下は他人 作家名:広小路博