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皮膚の下は他人

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男は女に問いただして、ペースを取りもどそうとする。はたして、女は平然と答えるではないか。
「いやなことはしないでください」
注文をつけてくるのだった。
「たとえば、どんなこと」
「いきなり、口に入れてきて、出すとか」
「トイレの代わり、させるとか」
大胆なことを言う。女の言葉の意味を一つひとつ問いただすこともなく、男は分かったようなふりをして聞き流し、この女の体験してきたことに思いをおよばせ、頭に血が上ってくる。スイッチが入りかけた。
「どんなことをして欲しい」
男が切り返す。
「わたしも盛り上げてほしいんです」
なるほど、そうなのか、かわいいことをしゃべる、娼婦ではないな、ちがうなと男は思った。
「一回してね、起きたらもう一回してください」
とたたみかけてくる。ねだっているのだ、男は気に入った。性交が好きなのか欲求不満かと興奮する。好きと言われたら、勃ってくる。この賢い女の身元を知りたくなってくる。
「仕事、してますか」
「いいえ、主婦です」
「だんな様、どんな人」
「同じ大学の先輩で、その人が京都で開業したから、手伝いがいるからと言われて、京都くんだりまで、ついてきたんです」
おもしろいことを言う。京都の町をそれほど好きではないらしい。
「京都の人はほんとに難しい。ほめられて、舞い上がると、すぐに落としにくるんです。持ち上げただけなんですね、そこで、謙遜しないと、バカにされるんです」
むつかしいことになってきたが、文化レベルが発達すれば、言葉を自在に駆使するようになり、言葉で人間関係を遊ぶというか楽しむようになる、男がそれなりに感想を述べると
「この頃、分かってきたのよ、おもしろい文化だと思うわ」
何かを求めてこういうこと、風俗嬢のまねごとをしているようだ、何かを。旦那の仕事に興味をいだいたが、いまはそんなに重要なことではない。後回しにする。女の謎は深まるが、素直な態度にはよい印象を持ったし、本当のことを話してくれているように感じられた。恋人どおしのような、心がうちとけあうように思えてきた。会話がうまい、かみあってくる。
「時々、こういうことをするんですか」
「社長さんにだまされてね、一緒にお食事してあげてね、とすすめられて。紳士だからって」
「だまされてね」
と男は女の言葉を繰り返した。
「その日は主人が出張なので、まあ9時ごろまでに帰ればいいかと」
「子供がおられないんでしょ」
「子供がいたら、違っていたでしょう」
「子供がいたら、どうちがいますか」
「子供はね、子供とはね、性的関係が入り込む余地がないから、家庭のなかに、非性的な関係が出てくるのです」
「なるほどね、おもしろいことを言う」
「主人も勝手なことをしているみたいなので、わたしもそれからは時々楽しんでいます」
男は女の語彙の深さ、多様さに感心した。この女はただ者ではない。これまでにないタイプの女性である。
「着替えますか」
「はい」
女は立ち上がって部屋の隅に行く。浴衣を籠から取り出す。うす茶色の麻のカーデガンを脱ぐと、白いブラウス、ピンクのブラジャーが透けて見える。衣紋かけにかけていく。ブラジャーは乳房を下から包み込むようにゆったりしていて、レースがほどこされてあり生地は薄く、乳首がめざとく分かるような、高価そうでおしゃれなものであったから、男はその気品に驚いた。
浴衣を羽織ってから、スカートを脱いだ。所作が見事である。ブラジャーとお揃いのパンテイがちらりと見えた。浴衣姿になって、戻ってくると
「横に坐って」、男が指示した。
女が横に座るやいなや、男は引き寄せてうしろから抱きしめた。首筋に口づけた。ほのかに香る。香水ではなくて、上等なせっけんのにおい。わざとらしくなく、ふだんそのままの姿はうれしい。右の肩を口に含む。口づけする。甘くかむ。女のからだを味わうように。肩先から唇を首筋、耳元へ這わしていく。女はため息をつく。反応しているのを確かめると、男根に血液が流入していきいっそう硬さを増す。
頭にも男根にもエネルギーを十分満たして、二正面作戦だ。耳たぶを唇にはさむと、身もだえする。このときを逃がさず、ブラジャーのなかに手を入れて、乳房をすくい上げるようにしてつかむ。たっぷりとしていて手に余りそうな量感がある。乳首がいまにもとびだしそうなタイプのブラジャーだ。
男が乳首をつまむと
「感じやすい」
と言葉に出して反応する。乳首をきりきりと責める。
「吸って」
女がせがむ。
「盛り上がってきたのですか」
と男が意地悪く言う。
「お乳をいじられると、あそこが感じ始めるのです」
女は積極的だ。男がリードされそうだ。
男はしかし、吸わずに我慢して、会話する。
「安心しましたか」
「ええ、お話ししていただいたので。本当は恐がりなんです」
「そんな風には思えませんが」
「やさしそうな方だからと言われたので」
話しながら、男は浴衣をぬがす。パンテイに手を伸ばす。ビキニのすけすけである。触れると毛を剃っているのがわかる。そのわけを聞きたいと強烈に思ったが、あとの楽しみに残しておいて、男は女の腰を浮かせパンテイを取る。
「かわいらしいね」
「選んではいてきたのですよ」
ほんとうに言葉がするりするりとでてくるではないか。女の賢さと本気度が感じられて、男は体の硬度を増した。小さくなったパンテイを手の中にのせて男は
「お尻、大きいのにね」
と女に話しかけ、そのアンバランスをほめた。じっさい、お尻は大きく感じられた。ゆで卵をむいたように、つやつやしていて張りがあった。お尻をなでれば、30代の女の生命力を感じることができた。
ブラジャーも取る。裸にして膝に乗せるとちょうど、乳房が男の顔にくる。乳房の形をはかるように舌でなぞる。乳首を含んで吸う。
「あー」
と小さな声をあげる。
「乳首がね、身体の芯に直結しているの」
と自分の反応を説明する。おもしろいと男は思った。自分からも盛り上げようとしているのだ。言葉の使い方がいかにもうまい。言葉を使いながら盛り上がっていくのだろうか、あまりないタイプの女性ではある。
女がなお、主導権を握っている。男はこの女の責め方をいろいろ考えてみた。
「どんな感じ」
「濡れてくるのがわかります」
女が性欲をさらしつつある。
「いつから濡れてるの」
「ここへくると考えたときからじわじわと」
「濡れてくるとどうなるの」
「あそこがぱくぱくしています」
男が欲しいと、女は告白しているのではないか。

4あふれ出そうな花弁
「立ってみて」
女が男の前に足をそろえて立つ。
男は花芯を眺める。花芯は花弁に包み込まれていて見えない。小陰唇も外側の土手にかくれている。もともと小さいのか、使い込まれてないのか。たしかめたくなった。
顔を近づける。すると、愛液がいまにもあふれそうになっているではないか。男は心の中で感嘆の声をあげた。素晴らしい光景だ。花芯の中はもう、あふれるようになっているのだ。その菊水、愛液をいっぱいにして、かわいらしい花弁がせき止めているのである。
作品名:皮膚の下は他人 作家名:広小路博