小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

一人旅の勧め

INDEX|4ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

旅の季節


昔から人込みや混雑が嫌いだったので、一人旅に行くときは必ずシーズンオフにする。また、冬に旅行に行くことはない。寒いのは嫌いだし、どうしても荷物に衣類が多くなってしまうためだ。時期的には、ゴールデンウィークの喧騒が終わった5月中旬から梅雨入り前の6月上旬か、大学生がキャンパスに戻って観光地が静かになった9月に行くことが多い。
但し、近年のアジア系の団体旅行者には閉口する。こういった団体旅行は季節を選ばないし、常に団体で行動し、うるさいしマナーも良くない。特に宿泊した宿でこういった人たちと遭遇してしまうのは最悪だ。だからホテルや旅館を選ぶ際には、比較的小規模で高級なところを選ぶことが多い。安くて大規模な観光ホテルに泊まると、かなりの高確率で日本語を話さない人たちの団体と一緒になってしまう。
少々話が横道に逸れた。本題に戻ろう。
何年か前に能登半島を一周したことがある。
季節は、まだ梅雨入りする前の6月上旬だった。旅行シーズンとしては、完全なシーズンオフである。
能登に行った動機としては、まず、開通したばかりの北陸新幹線に乗りたかったのと、千里浜を思いっきり車で走ってみたかったという2点だった。
学生時代に名画座で見た映画『あらかじめ失われた恋人たちよ』の冒頭近くで、主人公が乗ったバスが千里浜を突っ走るシーンがあった。非常に印象的なシーンで、自分もこの砂浜を車で走ってみたい! と感じたことを覚えている。何十年ぶりかで、このときに感じた思いを実行しようと考えたのだ。
金沢は仕事で何度も訪れていたので、まだ降りたことが無かった富山駅で北陸新幹線を降り、駅前でレンタカーを借りて走り出した。
そしてレンタカーで千里浜を突っ走り、長年の希望を叶えたのだった。
その後は能登半島を時計回りにぐるりと回ったのだが、その途中、輪島に宿泊した時のことだ。
私は旅先で宿泊したときに夕食を外に食べに行くのが面倒で、よく宿で夕食を摂るのだが、このときはせっかく日本海のすぐそばに来ているのだから、おいしい海鮮料理が食べたいと思い、宿には朝食しか頼んでいなかった。事前にインターネットでおいしそうな店をリサーチし、いくつかの候補をリストアップしていた。
宿にチェックインして一休みし、早速夕食を食べるために外に出たのだが、あらかじめリストアップしていた店は、すべて閉まっていた。
朝市で全国的に有名な街にもかかわらず、食事のできる店がオープンしているのはゴールデンウィークや7月~8月、年末年始等の旅行シーズンのみだったのだ。
私は食事を求めて街中を歩き回り、街はずれでやっと食堂を見つけ、そこでカツ丼を食べたのだった。
シーズンオフは、人気の観光地も静かで空いているというメリットがあるが、このようなデメリットもときにはあるのだ。
作品名:一人旅の勧め 作家名:sirius2014