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東京メランコリズム【後編】

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「はい。ありがとうございます。でも辛い時は蓮斗さんに話してますから。」
「蓮斗さんのこと…まず忘れることから始めましょう。これは治療です。」
「嫌です。蓮斗さんは大切な存在なんです。」
「それはもちろんわかってます。ただもうこの世に存在しないんです。」
「…いや!そんなのいや!」
「落ち着いてください!」
ユキは泣き出し暴れ出した。医師は必死でユキを抑えつけた。
「誰か薬を!」
「はい!」
医師がそう言うと看護士が薬を飲ませた。暫くしてユキは落ち着いた。そして疲れたのか眠ってしまった。
「やっぱりサイコパスだったか…」
医師は唖然とした様子だった。どうしてもっと早く気付かなかったのか…そういう思いもあったのだ。しかし、サイコパスという精神疾患を見抜くのは難しいもので、他の精神疾患と誤診されることも多い。これは他の精神疾患にも言えることだった。目に見えないもののため区別が難しいのだ。問診表でもわからないことや、患者の発言でもわからないことは山のようにある。

 そして十七時頃、ユキは目を覚ました。
「私…」
「あ、起きましたか?」
「眠ってたんですか?」
「はい。眠ってましたよ。」
「そうですか。すみません。」
「今日からはちゃんと薬を処方箋の通りに飲んでくださいね。悪化してしまいますから。」
「…はい。」
「サイコパスってどんな病気なんですか?」
「説明するのは難しいです。」
「そんなに重たい病気なんですか?」
「薬をしっかり飲めば症状は抑えられますから。」
「…はい。」
「では来週また来てください。」
そう言われるとユキは家路へと着いた。

 そしてまた仕事が始まった。その朝、ユキはいつもと同じ様子だった。しかし、仕事を辞めようと考えていた。その日の帰り際にユキは所長に話しかけた。
「あの…私、仕事を辞めようと思うのですが…」
「どうしたの?」
「いえ、特にこれと言った理由はありません。」
「そうですか…」