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東京メランコリズム【後編】

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「でも心配だよ、シンジが…」
「僕は大丈夫だから安心して行っておいで。」
「うん。ありがとう。」

 そして翌日、あおいは職場に欠勤する旨を連絡した。それから実家へ帰る支度をして出発した。家でひとりになったシンジは薬も飲まずに、特に何もせずに一週間を過ごした。病状が少し悪くなっていることにシンジは自分でも気付いていた。あれ以来、一切薬を飲んでいなかったのだ。そして一週間後、あおいが帰ってきた。

 「ただいま。疲れたよー。」
「おかえり。」
「シンジ?すごく顔色悪いよ?」
「大丈夫だよ。」
「ちゃんと薬飲んでる?」
「うん。」
シンジは嘘をついた。薬は律儀にその日その日のうちに捨てていたのだった。
「ねぇ、ユ…」
「え?」
「あおい…」
「今、ユキって呼ぼうとしなかった?」
「…」
シンジはあおいをユキと呼ぼうとしてしまった。
「ねぇ、シンジ!やっぱり私をユキさんと重ねてるの?」
「…」
「答えて!シンジ!」
「…うん。ごめん。どうしてもユキのことが頭から離れなくて…」
「重ねないでよ!私はあおいなんだよ。」
「ごめん。」
「あんな亡くし方をしたから仕方ないとは思うけど…もう忘れてよ。」
「…」
「私だけを見てよ。」
「ごめん。あおいのことは好きだよ。」
「でもそれはユキさんに似てるからでしょ?」
「…」
「答えてよ。似てなかったら興味すら持たなかった?」
「うん…たぶん…」
「そう…」
「ごめん…」
「私、辛いよ。ユキさんと重ねられるなら一緒に居たくない…」
シンジは何も返せなかった。このやりとりに疲れたふたりは気付くと眠ってしまっていた。