東京メランコリズム【後編】
シンジはニルバーナを聴きながら横になっていた。どうしたらあおいにユキを重ねることなく接することが出来るのかを考えていた。考えても考えても答えは出なかった。しかし、このままではいつかバレてしまうと思っていたのだ。ニルバーナを聴くとユキを思い出し、ユキを思い出すとユキが好きだった蓮斗のことも頭に浮かんできたのだった。そうするとあおいが帰ってきた。
「ただいま。」
「おかえり。お疲れ様。」
「今日はずっと横になってたよ。」
「調子悪かったの?」
「ううん。もう大丈夫だよ。」
「そう…調子悪い時はちゃんと話してね。」
「うん。わかった。」
「あれから幻覚は?」
「見てないよ。」
「そっか。良かった。ニルバーナ聴いてたんだね。」
「うん。好きなんだ。知ってるの?」
「もちろん。有名だもんね。」
「あおいは好き?」
「うん…普通に好きだよ。」
「そっか。それなら流しておこうか。」
「うん。」
そして夜も更けてふたりは眠りについた。そして翌朝、あおいは仕事へ行った。それから少ししてシンジは病院へ行った。
いつものように聞き飽きた台詞でシンジは呼ばれた。
「シンジさん。診察室へお入りください。」
「はい。」
そして診察室へ入った。
「調子はどうですか?」
「幻覚はまったく見てません。ただ…」
「ただ?どうかなさいましたか?」
「彼女にユキを重ねてしまうんです。」
「似ているのですか?」
「はい。とても似ています。外見とかコーヒーに入れるクリームと砂糖の量がそっくりなんです。」
「そうなんですね…」
「はい…」
「でもそれは彼女さんにとっては失礼だと思いますよ。」
医師はハッキリとそう言った。
「それはわかってます。」
作品名:東京メランコリズム【後編】 作家名:清家詩音