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東京メランコリズム【後編】

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 「すみません、今の家を解約したいのですが…」
不動産屋であおいは言った。
「いつですか?」
「出来れば早く…」
「月毎の更新なので、今月いっぱいになってしまいますがよろしいでしょうか?」
「はい。ではそれでお願いします。」
そう言うと解約の手続きを済ませた。

 それからあおいは荷物をまとめて、シンジの家で住む準備を始めた。要らないものが多かったせいか片付けには時間がかかったが、解約の日まで時間があったので困ることはなかった。
「これで本当に同棲…だね。」
「ね。」
「嬉しいな。」
「ねぇ、そんなに僕のことが好きなの?」
「うん。大好き。」
「そんなに魅力あるかなぁ。」
「あるよ。かっこいいし、優しいし…なんか弱いところとか?」
「弱いところ…」
「うん。私、あまり「男!」って感じの人は苦手なの。」
「そっか。あまり男らしくはないもんね。」
「ううん。そういう意味ではなくて。」
「大丈夫。わかってるよ。」
そしてその夜もいつもと同じように、シンジはあおいの髪を撫でキスをしてひとつになった。シングルベッドにふたりは狭かったが、それでも幸せだった。そして夜が明けた。

 「ユキ…」
その声であおいは目を覚ました。
「どうしたの?シンジ?」
「ユキが…」
「幻覚?」
「ユキが…」
「幻覚だよ。薬はどこ?」
「これ…」
「飲んで!」
「うん。」
そう言うとシンジは薬を飲んで横にさせられた。シンジは本当は幻覚を見た訳ではなかった。眠っていたあおいに向けてユキの名前を呼んでいたのだった。どうしてもユキのことが頭から離れなかったのだ。それからシンジの心配をよそにあおいは仕事へ行った。