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東京メランコリズム【後編】

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「どうぞ。」
「うち散らかってるでしょ?ごめんね。適当に座って。」
「散らかってないよ。まだ綺麗な方だと思うよ。」
「そうかな。」
「うん、私は大丈夫だよ。」
「ねぇ、シンジ…」
「ん?」
「シンジの病気は治るの?」
「あぁ、どうなんだろう…でも症状が良くなってきてるみたいだから。」
「そっか。治るといいね。」
「うん。」
統合失調症もそうだが、精神疾患というものは完治ということが珍しいものだ。薬で抑える対症療法で精一杯なものが多い。シンジは薄々勘付いていた。

 そしてシンジはこう言った。
「コーヒー飲む?」
「うん。ありがとう。」
「クリームと砂糖を少しずつだよね?」
「うん。よく覚えてるね。」
「それぐらい簡単なことだから。」
「そっか。」
シンジがあおいのクリームと砂糖の量を覚えていたのは、言うまでもなくユキと全く同じだったからだ。

そうこう話しているうちに夜が更けた。この日の夜はとても寒く、外は雪化粧で飾られていた。
「ねぇ、シンジ。私、シンジと一緒に暮らしたいな。」
「え?」
「ダメかな…」
「ここの家で?」
「うん。」
「僕は大歓迎だよ。」
「良かった。」
「じゃあ、不動産屋に行って今の家の解約してくるね。」
「うん。一緒に行こうか?」
「ううん。大丈夫。」
「そっか。」
そしてふたりは同棲を始めることになった。あおいは次の休みの日に、今の家の解約手続きをしてきた。