東京メランコリズム【後編】
シンジはあおいが二十歳でなくて良かったと思った。同じ年齢ならきっと、もっと重ねて見てしまうと思ったからだ。
「あ、僕は二十八歳です。」
「お仕事は何を?」
「今は通院するだけの生活をしていて…」
「変なこと聞いてしまいましたね。すみません。」
「いいえ。事実ですから。」
「早く良くなるといいですね。」
「あの…また会ってくれますか?」
「はい。もちろんですよ。」
「本当ですか?」
「ええ。嘘ついてどうするんですか?」
「いえ…僕なんかと…と思って。」
「素敵ですよ、シンジさん。」
「そうですか?照れますね。」
そんな会話をしていると時間はあっという間に経ち十七時を回っていた。
「ずいぶん長居しましたね。そろそろ出ましょうか…」
「はい。」
そう言うとふたりは喫茶店を後にした。シンジはあおいとユキを重ねていないと言ったがそれは嘘だった。ここまでソックリなあおいとユキを重ねざるを得なかった。自分の苦しみから解放されたい一心だったのだろう。もちろんあおいには失礼だという罪の意識はあった。それから少し街を歩いてふたりは家路へと着いた。
その夜、シンジはあおいに電話をかけた。
「もしもし、シンジです。」
「はい。」
「あの…あおいさんの喫茶店に行ってもいいですか?」
「もちろん!是非いらしてください。」
「良かった。では明日行こうかな…」
「はい。いつでもいらしてくださいね。仕事中なのでお話は出来ませんが。」
「わかってますよ。邪魔しないように行きますね。」
「ふふ。なんかシンジさんて面白い方ですね。不思議な方ですよね。」
「…」
「あ、悪い意味ではありませんよ。」
「それなら良かったです。あの次の休みの日は空いていますか?」
「はい。次はまた来週ですが…どこか行きますか?」
あおいからの誘いが来るとは思わなかったシンジは正直驚いた。
「え?いいんですか?」
「はい。もっとシンジさんとお話してみたいですから。」
「本当ですか?」
作品名:東京メランコリズム【後編】 作家名:清家詩音