東京メランコリズム【中編】
「そうかもね。」
「でもやっぱり良くないよ。やめなよ、もう。」
「出来ればやめたいよ。」
そんな話をしているうちに外はすっかり暗くなっていた。秋の夜は肌寒さとどこか寂しさを感じさせる、そんな風が吹いていた。
「蓮斗…」
「なぁに?」
「私とまた付き合わない?」
「え?」
「ヨリを戻さないかってこと!」
「どうしたの急に?」
「別れてから何人か付き合ったけど、やっぱり蓮斗が一番だなって思ったから。」
「そっか。ありがとう。でも僕、今はこんなだよ?」
「それでも蓮斗であることには変わりないよ。」
「そう?本当に?」
「うん。私って嘘つかないでしょ?」
「確かに…」
「僕で良ければ…」
「やったぁ!またよろしくね。」
「うん。こちらこそ。」
そうしてふたりはヨリを戻すことになった。その夜、秋江は帰ることなく蓮斗の家に泊まっていった。約五年ぶりぐらいに蓮斗と秋江はキスをした。蓮斗は少しずつ秋江の身体を触っていった。蓮斗は妙に新鮮な感じと安堵感を覚えた。それからふたりはひとつになった。
翌朝、蓮斗は秋江より先に起きていた。明らかに様子がおかしいことに蓮斗は自分自身でも気付いていた。
「春子、会いたいよ。春子…」
その声を聞いた秋江は目を覚ました。
「どうしたの?」
「春子、会いたい…」
以前電話で春子の話を聞いていた秋江は状況を察知した。
「薬!」
そういうとテーブルから薬を取り出し蓮斗に飲ませた。
「ねぇ、春子…」
それから少しすると薬が効いてきたのか蓮斗の様子は落ち着いたようだった。
「秋江?」
「なぁに?」
作品名:東京メランコリズム【中編】 作家名:清家詩音