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東京メランコリズム【中編】

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そう返事をしたもののやめられる自信はなかった。そしてその日の診察は終わり、家へ帰った蓮斗は秋江が来るのを待っていた。ニルバーナの音楽を聴きながら。

 十四時頃、蓮斗の家のインターホンが鳴った。秋江だった。秋江は五年ほど前と変わらない様子だった。
「わぁ、ひさしぶり!」
「いらっしゃい。」
「髪伸びたね。」
「そうだね。」
「ちょっとカートみたいになっててかっこいいじゃん!」
ニルバーナを聴くようになったのは秋江の影響だった。
「相変わらず音楽は聴く専門だけどね。」
「ギター弾いて歌えばいいのに。」
「無理だよ。難しそうだもん。」
「やってもいないのに…」
「一応、少しは…」
「そういえば挫折組だったね。」
「うん。」
久しぶりに会ったふたりの会話は弾んだ。
「今日はどうしたの?」
「ううん。特に何でもないよ。」
「本当に?」
「うん。」
「それなら良かった。」
「どうして?」
「悪い知らせでもあるのかと思ったよ。」
「ふふ。なにそれ。」
「ううん。何でもない。」
春子となつという親しい人間をふたりも亡くした蓮斗は少し安心した。
「病気はどう?ちゃんと治療してる?」
「うん。たぶん。」
「たぶんて…してないの?」
「調子悪い時にだけ薬飲んでる。それはダメらしいんだけど。」
秋江になら素直に話しても大丈夫な気がした蓮斗は正直に話した。
「腕見せて…」
「はい。」
袖をまくって左腕を見せた。
「うわぁ…痛そう。」
「痛みとかないよ。」
「だから癖になるんだよ。」