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東京メランコリズム【中編】

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「…」
秋江はまた聞いてはいけないことを聞いてしまった気がした。
「たぶん僕への見せしめだったのかなって。」
蓮斗は春子のこと、なつのことなど、統合失調症になったことなどを詳しく話した。
「そうだったんだ…」
「うん。」
「大変だったね。」
「うん。」
「ねぇ、今週末会えない?ちょっと急なんだけど。」
「いいよ。」
「あ、体調悪かったら無理しないでね。」
「ありがとう。」
「じゃあ、蓮斗のうちに行ってもいい?」
「いいよ。うちの場所覚えてる?」
「引っ越したりしてないよね?」
「うん。」
「それなら覚えてるよ。」
「じゃあ、お昼過ぎぐらいに来て。午前中は病院だから。」
そうして蓮斗は五年ぶりぐらいに秋江と会うことになった。

 そして週末、蓮斗は病院へ行った。いつものように三番の診察室へ呼ばれると蓮斗は入っていった。
「調子はどうですか?」
「幻聴ですか?それはだいぶ少なくなった気がします。」
「薬はちゃんと飲んでますか?」
「はい。」
蓮斗は嘘をついた。
「リストカットなど自傷行為は?」
「たまに…」
蓮斗はリストカットが癖になっていることを話さなかった。この時、嘘をついたのだ。
「良くないですね…と言ってもやめられるものでもないと思いますが。」
医師にはわかっていたのだ。自傷行為が簡単にやめられるものではないと。
「あの実は…」
「何ですか?」
「春子…幻聴とみんなが言う人に僕はよく話しかけるんです。」
「それで返事は?」
「一切ありません。」
「それではやめてみましょうか?」
「返事のない会話なんて寂しいでしょう。」
「はい…」