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東京メランコリズム【中編】

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「蓮斗さんの彼女さんにです。」
「そっか。」
「はい。負けません。」
「…」
「いつか私だけのものにしてみせます。」
「…」
蓮斗は返す言葉に困って何も言えなかった。そうするとふたりはコーヒーを飲み終え、喫茶店を後にしたのだった。

 蓮斗が家へ着くとその日は秋江はもう帰っていた。
「ただいま。」
「おかえり。お疲れ様。」
いつもと逆の立場だったが、それが新鮮だった。帰った時に誰かが待って居てくれる、蓮斗にはこれが物凄く嬉しかった。
「ねぇ、僕より早く帰ってるなんて珍しいね。」
「そうだね。今日はたまたまだよ。」

 その夜、秋江は蓮斗にこう言った。
「昨日、何かあった?」
「何もないよ。」
「じゃあ、どうしてあんなことしたの?今まではちゃんと治療してたのに…」
「…」
蓮斗は何も返せなかった。ユキと浮気したことは絶対にバレないようにしなければと思っていたのだ。
「蓮斗、何かあったでしょ?」
「だから何もないってば。」
「嘘。何もなければあんなことしないでしょ?」
「あんなこと?」
「そう…あんなこと。」
「あんなことって言うけど、あんなことではないんだよ。」
「そう…かな…」
「そうだよ。病気の人にしかわからない。」
「私ね、これでもわかろうとしてるんだよ?」
「わかってる。」
「でも伝わってなかったんだね。」
「そうじゃないよ。」
「もう蓮斗とは一緒に居られない…」
「…」
「ごめんね。限界だよ。」
秋江の目には涙が浮かんでいた。そんな蓮斗は何も言えなかった。