東京メランコリズム【中編】
「もうすぐ彼女が帰って来るかも…」
「じゃあ、私は帰りますね。」
「うん…」
「今日は顔が見れて良かったです。」
「うん。気を付けて帰ってね。」
そう言ってユキは帰っていった。それから二十分ほどすると秋江が帰ってきた。危うく蓮斗が浮気をしたことがバレるところだった。
「ただいま。」
「お疲れ様。」
「体調は?」
「大丈夫だよ。ありがとう。」
「良かった。心配したよ。」
「明日は大丈夫かな。」
「今日はいつもより疲れたから早く寝るね。」
「うん。」
そして秋江が眠ると、蓮斗は浮気をしてしまった罪の意識から逃れるためオーバードーズをした。そして左腕にリストカットをした。いつもより傷は深かったが、痛みはほとんどなかった。
翌朝、蓮斗がリストカットをしたことに気付いた秋江は蓮斗にこう言った。
「どうして?折角良くなってきているのに…」
「ごめん…」
「これじゃあ、私が今までしてきたことの意味がなくなるじゃん!」
秋江は怒っていた。当然だった。
「もうしないって約束してくれる?」
「…」
「どうして何も言わないの?」
「正直、約束出来る自信がないんだ。」
「そう…」
「どうしても苦しい時だけは許して。」
「そんなのは絶対にダメだよ。」
「お互いに良いことなんてないんだから。」
「わかったよ。」
蓮斗は頼りなく約束をした。しかし、蓮斗はどうせ約束なんて破ってしまうものだと思った。春子が何度も約束を破ったように…
そしてふたりは仕事へ行った。蓮斗は何食わぬ顔をしてユキに仕事を教えた。ユキも何事もなかったかのように振る舞っていた。するとユキがこう言った。
作品名:東京メランコリズム【中編】 作家名:清家詩音