東京メランコリズム【前編】
そう言うと蓮斗は春子に水を渡した。春子は薬を飲んでいた。
「風邪?」
「ううん。持病。」
「そっか。病気のこと聞いてもいい?」
「うん…でも引かないかな…」
「大丈夫だよ。」
「私ね、双極性障害っていう病気なの。」
「…?」
蓮斗は双極性障害という病気を知らなかった。
「それってどんな病気なの?」
「所謂、躁鬱病って呼ばれてた病気なの。躁状態と鬱状態を繰り返す、そんな病気かな。」
蓮斗はよくわからなかったがこう言った。
「そうなんだ。大変だね。」
「ちなみにカートも双極性障害だったみたいだよ。」
「そうなんだ…今はどんな感じ?大丈夫?」
「うん。今は大丈夫だよ。」
「それなら良かった。」
双極性障害を知らない蓮斗は症状が出るとどうなるのか不安だった。
「蓮斗、彼女居る?」
「え?」
「今、彼女は居るの?」
「今は居ないよ…もう暫く居ないよ。」
「かっこいいのに。」
「モテないよ、全くね。」
「本当にー?」
「本当だよー。」
「そっか。」
「そう、女っ気なくて…男っ気さえ…友達さえほとんど居ないよ。」
「そうなんだ。」
単身上京した蓮斗には、東京には友達がほとんど居なかったのだ。
そうこう話しているうちに時間は二十二時を回っていた。
「私、そろそろ帰るね。」
「うん。駅まで送っていくよ。」
「ありがとう。」
そう言って、駅まで送っていった。
そして春子は家路へと着いた。家へ着いた蓮斗は双極性障害について調べた。双極性障害は難しい病気らしく薬で症状を抑えることしか出来ないものだということを知った。躁状態の時は、何でも出来る気になったり、時に凶暴性を増すことがあること、鬱状態の時
作品名:東京メランコリズム【前編】 作家名:清家詩音