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東京メランコリズム【前編】

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「もう家には着いた?」
「うん。家に居るよ。」
「早いね。東京の街まで近いんだね。」
「そうね。結構近いかな。蓮斗さんは?」
「うちも近いかな。東京の片隅だけどね。」
「今度遊びに行ってもいい?」
「うん。散らかってるけど。片付けておくよ。」
「そんなに気を遣わなくていいよ。」
「いや、でも…」
「私なんかですから…ね。」
「そんな私なんか…なんて言わないで。」
「うん。でもなんか申し訳なくて…」
「だって春子さんだって、もし自分の家に誰かを呼ぶなら片付けるでしょ?」
「そうかも…でもやっぱり申し訳ない。」
「じゃあ、気が向いたら片付けておくよ。」
「うん。じゃあ、今日はこれで。」
「ではまた。」
そう言うと電話を切った。

 蓮斗は嬉しさ半分、不安半分だった。今までに女性は愚か、男性さえもほとんど家に入れたことがなかったからだ。でも蓮斗は楽しみで仕方がなかった。そしてその日、蓮斗は家路へと着いた。

 蓮斗は早速部屋を片付けた。と言っても、そんなに片付けるまでもなかった。物という物がほとんどなかったのだ。それにそれほど広い部屋でもないので片付けは早く終わった。それでも春子がいつ来てもいいようにと思っていた。一通り片付けた蓮斗は春子に電話をかけた。
「もしもし。」
「はい。」
「いつ来る?一通り片付けたからいつでもいいよ。」
「じゃあ…明日はバイトがあるのでその後でもいい?」
「うん。じゃあ、バイト後に。」
「そういえばどこに住んでるの?」
「町田なんだけど。わかる?」
「うん。よく遊びに行くから知ってるよ。」
「春子さんはどこに住んでるの?」
「私は代々木上原…知ってる?」
「うん。小田急線沿いだから。」
「そうだね。」
「あ、バイトは何時まで?」