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東京メランコリズム【前編】

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「…」
「早目に受診した方が良さそうだよ。」
「僕、そんなに変ですか?」
「正直に言うね。」
「はい。」
「いつもと違って様子がおかしいよ。」
「やっぱり変だってことですか?」
「うん。だから病院行こう。」
そう言うと半ば無理矢理、蓮斗は精神病院へ連れて行かれた。

 問診表を書き、初診の手続きを済ませて暫く待っていると蓮斗は呼ばれた。
「蓮斗さん、三番にお入りください。」
そうして三番の診察室へ入っていった。
「問診表を読ませていただきました。亡くなった方の声が聞こえたのですか?こういうことは初めてですか?」
「はい。初めてです。でも確かに聞こえました。」
「そうですか…とりあえず今回は安定剤を少し出しておきますね。もしもまた聞こえるようなことがあれば受診しに来てください。」
「はい。わかりました。ありがとうございました。」
「お大事に…」
そして診察が終わり、診察室の中でのやりとりをなつに話した。
「ねぇ、蓮斗くん、なんだって?」
「とりあえず幻聴が聞こえたことを話しました。」
「そしたら?」
「いえ、今回はそれで終わりでした。」
「そっか…」
「それで安定剤を出されました。また幻聴が聞こえるようなら来てくださいとのことでした。」
「そう…心配だなぁ。」

 そして週末も終わり、蓮斗はまた仕事へ行った。
「おはようございます。」
「おはよう。」
いつもと変わらない様子だった。しかし、蓮斗が安定剤を飲むようになっていることだけが変わっていた。職場ではなつ以外、そのことを知ることはなかった。なつは蓮斗との約束を守っていたのだ。
「蓮斗くん!」
小声でなつが蓮斗を呼んだ。
「大丈夫なの?」
「はい。なんとか。」