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東京メランコリズム【前編】

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な気がしたのだ。いや、確かにそこに春子が居た…蓮斗はそう思わざるを得ない状況だったのだ。
「春子?」
死んだはずの春子は当然そこに居る訳がなかった。
「春子?」
何度も蓮斗は春子の名前を繰り返し呼んだ。すると返事が聞こえた。
「蓮斗…」
頼りなく薄っすらとした声だったが、確かに蓮斗には自分が呼ばれる声が聞こえた。それは間違いなく春子の声だったのだ。この世には居ないはずの春子の声が蓮斗にはハッキリと聞こえたのだった。

 そして約束の時間に間に合うように、蓮斗は支度をして待ち合わせ場所へと行った。
「お待たせしました。」
この日、蓮斗は遅刻をしたのだった。律儀な蓮斗は遅刻することなど人生でほとんどなかった。この日、なつはTシャツにジーパンというラフな格好だった。
「ううん。大丈夫だよ。」
「喫茶店行きませんか?少し相談に乗って欲しいんです。」
「いいよ。」
そう言うとふたりは前回と同じ喫茶店に入りコーヒーを注文した。蓮斗はブラックで、なつは砂糖だけを入れていた。前回と同じ風景だった。
「相談って何?」
「今朝…春子…死んじゃった子の声が聞こえたんです。」
「え…?」
「それって幻聴じゃないの?」
「いえ。確かに「蓮斗…」って声が聞こえたんです。」
「…」
「それは幻聴だよ。」
「…そうなんですか?」
「そうだよ!」
「やっぱり幻聴ですよね。」
「絶対にそうだよ。」
「そんなことないと思うのですが…」
「そう…」
「薄っすらと頼りなくですがハッキリと聞こえました。僕のことを呼ぶ声が…」
蓮斗の様子がおかしいことになつは気付いた。
「蓮斗くん、これから病院行こう。職場には内緒にしておくから。」
「病院?」
「そう。」
「精神科ですか?」
「うん。そうだよ。」