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東京メランコリズム【前編】

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「ごめん…」
「本当に気にしないでください。」
蓮斗は少しばかり春子のことを思い出した。それからも雑談をしていたが、なつは蓮斗の恋愛に触れることはなかった。昼食を取り終え、ふたりは仕事へ戻った。

 「じゃあ、さっき言った通りにやってみて。」
「はい。こうでしたよね?」
「うん。そうそう。」
「…」
「蓮斗くん、仕事覚えるの早いよ。もう明日から一人で出来そうだね。」
「それはちょっと…」
「ちょっと?」
「不安です。」
「そうだよね。ごめんごめん。」
「あの…こういう場合はどうするんですか?」
「それはね…」
そんな会話をしながら蓮斗は作業を続けて、アルバイトの初日が終わった。帰宅した蓮斗は気疲れもありすぐに眠りに着いた。

 翌日も蓮斗は同じように出勤して、なつに仕事を教わった。そして休憩時間に入り、ふたりはまた一緒に昼食を取った。
「蓮斗くん、今度デートしない?」
なつは誠実な蓮斗に惹かれていたのだ。まだ知り合って間もないが、仕事とは言え同じ時間を共にすることが多かったせいか、なつは蓮斗に興味を持ち始めたのだ。
「え?僕とですか?」
「うん!どこに行きたい?」
「あ、もう決定ですか…」
なつのペースの早さに蓮斗は正直戸惑いを隠せなかった。
「もちろん!家はどこ?」
「町田です。」
「じゃあ、町田でデートしようか。」
「はい。でもあまり面白い街ではないかもしれませんよ?」
「そんなことないよ。」
「そうかなぁ…」
「今週末は空いてる?」
「はい。」
「そしたら今週末に町田にしよう。」
なつは半ば強引に蓮斗とのデートの約束をした。
「時間はどうしますか?」
「十四時ぐらいがいいかな…どう?」