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東京メランコリズム【前編】

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 翌日、十五時に蓮斗は面接へ行った。
「すみません。十五時からの面接へ来た蓮斗と申しますが…」
「あ、こちらへどうぞ。」
そう言うと面接室へと通された。面接室と行っても薄い壁で仕切られているだけの空間だった。
「それではまず履歴書を見せていただけますか?」
「はい。」
「…」
担当者は履歴書を見てこう問いかけてきた。
「弊社を志望された動機は何ですか?」
「求人誌を見て、自分でも出来るかなと思いました。」
「どんなところがですか?」
「集中力があるので細かい黙々とやる作業が得意なんです。」
「なるほど…」
「…」
「何か質問はありますか?」
「いえ、特にないです。」
「それでは明日か明後日には電話で合否を連絡します。」
「はい。よろしくお願い致します。」
そして面接は終わった。翌日、電話は鳴らなかった。恐らく不合格になったのだろうと蓮斗は思った。しかし、その翌日、蓮斗の携帯電話が鳴った。
「もしもし。」
「蓮斗さんの携帯電話でしょうか?」
「はい。」
「先日は面接にお越しいただきありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました。」
「蓮斗さん、採用させていただこうと思うのですが…」
「ありがとうございます。」
蓮斗は何か打ち込めるものが欲しかったので嬉しかった。
「いつから来れますか?」
「いつでも大丈夫です。」
「それでは来週からお願いします。」
「はい。よろしくお願いします。」
そう言うと電話を切った。

 アルバイトが始まるまでの一週間、蓮斗は春子のことで頭がいっぱいだったが、仕事に打ち込めば、持ち前の集中力で忘れることが出来ると思っていた。この時はそれが精一杯だったのだ。そう考えるとアルバイトとはいえ、少しばかり楽しみな部分があったのも正直なところだった。この時、夏本番とも言えるとても暑い季節だった。