東京メランコリズム【前編】
出しリストカットしていた。
「もう切らないで。」
「ごめんなさい。」
「どうして?また約束破ったんだね。」
「ごめんなさい。」
「そんなことだと好きでいられないよ。」
「…」
「心配してるんだよ?わかる?」
「うん…」
「もう帰るよ。」
「嫌だ。帰らないで。」
「どうして?」
「一緒に居て欲しいの。」
「わかったよ。心配だし…」
「ごめんなさい。」
そして蓮斗は優しく春子の頭を撫で抱きしめた。そして春子にキスをして、少しずつ身体を触り胸を触った。春子は蓮斗の誘いに拒むことなく、ふたりはひとつになったのだった。
「ねぇ、僕さ、春子と暮らすよ。」
「え?」
「心配だから。」
「ごめんなさい。」
「謝らないで。これは僕が勝手に決めたことだから。」
「ありがとう。」
「うちはそのままにしておくよ。」
「…いいの?」
「うん。居候?みたいな感じかな。」
「ありがとう。」
「心配なのもあるけど、春子のことが大好きだから。」
「嬉しい。」
「だから約束は守って欲しいんだ。」
「…」
「自傷行為はもうやめて。」
「…う、うん。」
春子の返事は頼りなかった。しかし、蓮斗はその頼りない返事を信じる他になかったのだった。
それから蓮斗は自分の家へ帰ることなく、春子の家に居候することになった。春子がアルバイトの時間は蓮斗は留守番をしていた。そうすることで、春子の病気を管理することになった。オーバードーズやリストカットをしないように見張っていたのだ。
そして春子は処方された通りの薬を飲み、リストカットもしないようになっていった。
作品名:東京メランコリズム【前編】 作家名:清家詩音