オヤジ達の白球 56話~60話
「公務員は住民の公僕だ。
人手が足らなけりゃ、除雪車を運転することもある」
「へぇぇ。公休日に仕事する公務員がこの世に居たとは驚きだ。
この雪だ。気をつけて行けよ。
お前さんまで立ち往生したら、現場で指揮をとる責任者がいなくなるからな」
「わかっているさ、そのくらい」じゃ行ってくるぜと柊が、
バッティング・センターをあとにする。
2本のわだちが駐車場から県庁へ向かう県道へ伸びていく。
午後4時。打撃練習を終えた男たちが、居酒屋へひきあげる。
この頃、積雪は5㌢をこえていた。
動き始めた車の屋根から、座布団のような雪のかたまりが滑り落ちてくる。
店へ戻った一行のもとへ、テレビから車の立ち往生の様子が伝わって来る。
柊が向かった県境の碓氷峠では、すでに400台から500台の車が
立ち往生している。
長野県と山梨県を結ぶ国道20号線も、茅野市から富士見町までの間が
通行止めになった。
こちらでも300台から400台の車が立ち往生になっている。
「おい。山のほうじゃ大変なことになっているぜ」
「どうやら雪見酒などと、のんびり呑んでいる場合じゃなさそうだ。
本降りになってきたぜ。このままじゃ、このあたりも大雪になりそうだ」
店の前の雪がみるみる厚みを増していく。
数分前に通り過ぎた車のわだちが、あっというまに雪にかき消されていく。
作品名:オヤジ達の白球 56話~60話 作家名:落合順平