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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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坂道(病院の坂道シリーズ)

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 香織ちゃんと僕は所謂幼馴染みというやつだ。学年で言うとひとつ違いだけど実際には二歳近くの差がある。
 家が近所で母さん同士が仲が良いので小さい頃はよく遊んでもらったものだ。
「調子はどう? 誰か見舞いに来たりする?」と僕は毎度新鮮味の無い言葉をかける。
「ううん。調子はまあまあかな。見舞いには誰も来ないね。もう二年だもん。
 飽きちゃったんじゃないかな。それとも忘れられちゃったか。
 ――ねえ祐君は、飽きられるのと、忘れられるのってどっちの方が可哀相だと思う?」香織ちゃんは眉間にしわを寄せながら真剣な眼差しで僕を見た。
 僕は無言で少し耐えたけどすぐに視線を逸らせた。
「イェーイ。今日もあたしの勝ちだね」と小さくガッツポーズをとる香織ちゃんはとても重い病気だとは思えない。
 僕は「なんだよ」と言って窓の外を見る。病院の窓からは僕の住む町が見下ろせる。
 その向こうには海がキラキラと輝いていた。
 少しの間、海を見ながら考えていた。
 次は何を話そうか。とか、次は自腹でお見舞いを買ってこようとか――。
 すると「いっつもわるいね」という香織ちゃんの声が背中越しに聞こえた。
「どおって事ないよ。バス代以外にお小遣いももらえるしね。
 バイトの出来ない中学生には結構貴重な収入源なんだよ」と用意していた台詞は意外とすんなり言えた。
 週に一回、ここに通うのは図書館から借りた本を届ける為だった。
 と言っても大半は少女向けのライトノベルである。
 小学校の頃にはマンガばっかり読んでいたと母さんから聞いたけど早く読み終わってしまうので間が持たないらしい。