短編集54(過去作品)
プロポーズは浩一郎からだったが、それもお互いに気持ちが最高に高ぶった時、この瞬間を早苗も待っていたに違いない。
「恋が愛に変わった瞬間ね」
早苗は言ったが、
「いいや、限りなく愛に近い恋が、成就しただけさ」
と、浩一郎が呟くと、目を瞑った早苗の唇に浩一郎の唇が重なる。
そろそろ四十歳を迎えようとする二人だが、
「まだまだ、限りなく愛に近いという気持ちに変わりはないんだ。だけど、愛というものを極めていこうという気持ちがある限り、僕は早苗を愛しているといい続けると思う」
早苗も同じことを言ってくれるに違いない。その気持ちは出会った頃と、きっと永遠に変わるものではないはずだから……。
( 完 )
作品名:短編集54(過去作品) 作家名:森本晃次